2019年2月25日

19世紀の壊れた本を直す

Le Petit Parisien の蔵書の修理と保存 第3回 2019年2月24日(日)14時~18時 参加5人+赤井+オーナー

去年に引き続き、壊れた本の修理を行いました。修理した本は3冊です。去年も参加してくれた方の熟練の手が頼もしい! 皆さん、プチパリが初めての修理経験でした。プチパリの蔵書は、古いものは16世紀からで、主な蔵書は19世紀後半から20世紀の本です。ミゾのない時代の本は、見返しが切れたり、表紙が取れたりして壊れやすい構造を持っていて、プチパリに来た時に既に壊れかけていた本が多いです。頻繁に読まれるものを優先的に直して、本を開いた時に120度くらいに固定できる書見台と、表紙の下に差し込んで表紙を支えるリーブルシュポールを用いて読書しています。

修理した3冊
 革表紙のミゾが切れかけて、角が傷んだ本。これは、アクリル絵の具で和紙を色染して、革の色に近づけたものを貼って修理しました。
 背表紙が取れてしまった本。これは、AF紙でクータを入れて、クータの縁が見えるのでアクリル絵の具で色染めして貼り、表紙をその上に戻して貼りました。
 見返しから切れてしまった本。裏見返しは失われていました。これは、AF紙でクータを入れて、表紙を戻し、両見返しの内側から和紙を貼りました。

本のクリーニング
 二人の手で、本を数冊ずつ書庫の外へ運び、「べっぴんさんクロス」でクリーニングしました。埃は酸性物質で本の大敵です。埃が入り込まないようにしっかりと本をわきで締めて、本の小口をクロスでぬぐい、表紙、見返しのミゾも撫でて汚れを落としました。見違えるようになった本もありました。寒い中、後半はコートを着ての作業! 全部はとても終わらないので、真ん中辺りの数段の本をきれいにして、続きは次回へ持ち越し。

SC6000塗布
 去年修理した本と再会しました。アクリルレジンとオイルがブレンドされたSC6000を、革部分が丈夫になるように薄く塗布しました。翌日の空ぶきは、オーナーが。バルザックの本、最初に見た時には背表紙が崩壊しそうで、革の金箔文字が一文字ずつふらふらになっていたのに、ずいぶんしっかりして、ちゃんと読める文字列が保たれていて、良かった。

そうそう、重要なことを言い忘れていました。接着にはJadeRを使用しました。JadeRの特徴として、無酸で、乾いた時も柔らかく仕上がる、と説明しました。あともう一つ、本の修理にとって重要な特徴があって、それは、可逆性。乾いた後でも、水をつければ、取ることができます。木工ボンドは、乾いたら取れませんが、JadeRは、もし何かの要請で、後世に入れた素材を取り去りたいと考えれば、元に戻すことができます。これは修理には重要な特性です。昨日の作業が、水で元に戻ってしまうと思うとちょっとせつないですけど、何がどう転んでやっぱり取りたいとなるかわかりませんが、その時にはそうできるということです。

作業の後でいただいたレモンの香りの紅茶がおいしかったです。皆さまお疲れ様でした。また来年!
書籍の修理と保存
書籍の修理と保存
書籍の修理と保存
書籍の修理と保存
書籍の修理と保存

2018年3月1日

小さな蔵書票ブックケースと、大きな本の修理

文庫本に貼る小さなサイズの蔵書票のご注文をいただき、函つきで作ってみたりしていました。活版印刷や函づくりって、楽しいものです。綴じがあると本だけれど、綴じがなくても楽しめてしまいます。この函は天地11cmで、蓋はマグネットで吸着します。

さて、大きな本の修理と保存を一年ぶりに、曳舟で行いました。一人だと大変なので、今回はボランティアを募って、5人+見学の方、記録係さんなどにご参加いただきました。
こんなふうに、背の外側や内側が切れてしまっていたりしていました。製本テープで持ち主ご本人が応急処置を施されたものは、逆側の見返しが切れてしまったという、修理が修理を呼ぶパターンになってしまっていたので、製本テープは取り去り、和紙を入れました。背がぱかっと外れたものには、クータを入れてから、背を戻して接着しました。





19世紀のハードカバーの本の多くは、180度開くと、表紙や見返しが切れてしまうという構造をしています。180度開いても大丈夫な本が作れるようになったのは後世のことです。本のオーナーの意向としては、できるだけ当時の装丁を残したいということがあり、180度開かなくても安全に読書できるように、この一年間で、書見台とリーブルシュポールを書斎に備えました。19世紀的不便さも楽しみながら、読書します。ただ、どうしても、外側に和紙が見えてしまう修理になったものもありました。そこで、二週間後にまた集まり、修理の糊づけの結果などを確認し、和紙を染めました。



和紙のクータも、見事に入りました。これらすべて、参加者さんたちの手仕事です。私は指示しただけです。見学のつもりだった方かもしれないけれど、手すきには仕事を申し付けて、書庫の外で、「べっぴんさんクロス」で本の小口などを拭いてもらいました。けっこうクロスを黒くする本もあって、びっくり。埃は酸性物質で本を傷めるので、除去すると良いです。土曜日を二回使った作業で、壊れかけた9冊の本が修理されて読める形になり、二段の本棚の本が、ピカピカに拭き上げられました。今年はひとまず、良かった良かった。でも本棚にはまだたくさん他の本も入っている。また来年!


2017年2月28日

革装の洋古書と暮らす3

に提案をするまでに二週間くらい。オイルや薬品を取り寄せるのに10日くらい。自分の本で試してみて、観察。そしてついにLe Petit Parisienでの本の保全です。
 ここの本の革表紙が傷んでいる原因は、一番に乾燥だろう。オーナーさんの意向としては、本はできるだけ現状の形で読みたい方針。ということは、傷んだ革を元に戻す方法はないので、予防しようと考えました。傷みがひどい数冊の本には今は手をつけず、まずは今大丈夫そうに見える大多数の全体を予防することを目的にして作業しました。

 革が表紙に使われた本をピックアップして集めました。それを、HPCを塗るもの、塗らないものに仕分けしました。粉が出るほど傷んだ革には、HPC(ヒドロキシ・プロピル・セルロース)のアルコール溶液を塗りました。セルロースが革の間に浸透して、革を強くしてくれます。どの本に塗ったか、後でわかるように、メモを取ってあります。ここの本は、すばらしいことに、既にオーナーさんの手で蔵書リストが作られているので、そのリストに、保全の記録を記入しておいてもらいます。


 その後、全部の本の革部分に、本の革用に定評のある良質の保革油を塗りました。イギリス製です。油の浸透に一日待ちます。

 翌日、再び行って、空ぶきをして余分なオイルを取りました。そして、アクリルポリマーのコーティング。空ぶき。これで、この状態で時間を止めてくれると期待してます。


 私の特殊なスキルが、思いがけず実践で役立って、社会貢献できました。中野の個展でお客様から「こんな所があるから、行ってみて」とショップカードをいただいて、足を運んでみて、本棚に惹かれてスケッチを始めた、この書斎。古本屋さんの本棚と違って、一個人の本棚というところが、佇まいに惹かれた理由かと思います。スケッチに通ううちに、触れた本の背表紙が壊れました。驚いてよく見れば、あっちもこっちも、傷んでいた。その時にぽろりと背表紙が壊れた本も、これでついにまた読める形になりました。何度も通ってわかったけれど、曳舟で人が集まる場所になっていて、おもしろい空間でした。その空間の背景にある本棚は、雰囲気や話題の要です。本にはこんな利用方法があるんだなと感じました。今後、ものによって、和紙修理が必要な本がありそうです。温度湿度は前から見ていただいています。夏に向けての紫外線対策をお願いして、ひとまず私の手作業は終了です。

2017年2月13日

革装の洋古書と暮らす2

 目黒区民ギャラリーでの第8回東京製本倶楽部展は無事に会期終了しました。たくさんの方においでいただき、ありがとうございました。明日から京都で始まります。
 そして私と一緒に『雨ニモ負ケズ』豆本が作れる、千葉のワークショップは16日木曜まで受付予定です。この機会をお見逃しなく。

 さて、粉が出るほど傷んだ革を補修するため、HPC(ヒドロキシ・プロピル・セルロース)を薬局で取り寄せ購入し、一日かけてエタノールに溶かして、塗布しました。私の所有本で、既に他の部分も傷んだり、いろいろある本に、練習台になってもらいました。結果、塗ったことでとても良くなったことを実感しました。セルロースの薄い皮膜ができて、強くなったかんじ。粉ももう出ません。こんなに変わるとは!


 さてHPCが乾いたので、他の本も一緒に、SC6000を塗りました。アクリルポリマーのコーティング剤で、空気中の窒素や酸素の影響を受けにくくなるので、革が長持ちします。うちの本棚だと、3年で革表紙が何もしなくても勝手に傷んでしまったので、これは必要だろうと思いました。SC6000はNYからの通販もできますが、田村書店の2階で手軽に買いました。空ぶきして、これで、自分の本のお手入れはひととおり終了しました。これで練習が済んだので、このあと、人様の御蔵書をお手入れさせていただく予定です。



 そして、読書。ポショワールの挿絵が入った仮綴じ本『青い鳥』を読み始めました。買ったすぐの夏は、結局忙しくて読めなくて、今。でもその間にフランス語力が上がっていたみたいで、対訳本を傍らに置いたら、辞書を引く必要もあまりなく、意味がわかります。子供のせりふ中心ですから簡単です。楽しいです。お金持ちの子供を見つめる視線が身につまされます。読書スタイルは、手袋をして、そして本は120度に開く書見台に置いています。仮綴じ本は糸が細いので、しっかり読書したら切れそうなので、120度までが安全かと。

2017年1月30日

革装の洋古書と暮らす

 19世紀後半から20世紀初め頃の、洋古本をほんの10冊程度所有しています。旅行や古書市、譲渡、インターネットなどで少しずつ集まってきたもので、表紙のデザインや素材、バランス、色味、組版や印圧、紙の素材や見返しなど、持っているからこそ、その時々で気づくことが勉強になっています。
 さて最近、本たちを見ていたら、あれっこの革、前からこんなに粉っぽかったかな? とドキッとしました。うぅーん、買った時どうだったか思い出せない。良くない変化に早めに気づくには、日ごろの観察が大事だなと。写真で記録を取っておけば、前に遡って見比べることができます。
 うちの保存環境は、小さな家なので劣悪です。本の素材は、温湿度の変化が多いと呼吸が激しくなって老化が速まるので、大きな空間で温度低め湿度50%程度で一定が良いようですが、うちは夏暑くて冬寒くて結露しています。そのため、アーカイバル仕様の保存箱を揃えているのですが、本を見たいので、いつのまにか、かなりの本が保存箱の外に出てきてしまっていて、保存箱の中にはたいしたものが入っていない現状。これは……。本の保存と、利用との、両方を考えないとうまくいかないということを実証してしまいました。
 本の保存を優先すれば、本は保存箱に入れておくのが良いのですが、そうすると本が見えなくなってしまう。見たい時にその本を箱から取り出せばいい、というんじゃなくて、本棚に本をいつも見ていたい気持ちが自分の中にあるんだなと気づきました。「本の背表紙を眺めること」が、今現在の私の、本の利用の大きな目的になっているみたい。
 こうしたことを考えているうちに、「本って何」と疑問に思いました。一月にLe Petit Parisienの本棚に惹かれてスケッチに通ったのは、それが美しい売れる本ばかりを集めた古本屋さんの本棚ではなく、一人の蔵書だから。本棚写真集も見返しました。朽ちかけている、図書室の中の革装本。一律にグラシンをかけたフランスの古本屋さん。

 博物館で所蔵しているような貴重書なら保存最優先としても、私個人が買える程度の古本は、発行部数が多く、手元に来た時に既に傷みが来ているので、私があと20年間くらい日々眺めて閉じ開きすることを、本の利用の目的に掲げることにしました。うちに来た本はあと100年の長生きはできないかもしれないけど、本の保存はもっと大きな家に住んでいるコレクターさんに任せた! それよりも私が本を活用して、ここから見て得たものを今後の製本や制作に役立てることが目的。小さな家だけど、本を開架で置いておく、としました。
 革表紙の劣化については、私のノートには、「傷んだ革を元に戻す方法はない。予防が大事。保護ジャケットをかける。保存箱に入れる。傷んだ革にはHPC(ヒドロキシ・プロピル・セルロース)の無水エタノール溶液を塗る。塗ることでさらに傷める場合もあるので注意。良質の保革油を少量塗り、半日以上置いて空拭きする。フランスの博物館が開発した靴墨タイプのは失敗作なので使わないで。保革油が長期的に酸化するという意見もあるが、20年前に塗ったものが良い状態である。」と記されています。ところが、これは5年前に取ったレッスンノートで、昨日先生方に聞いたら「アメリカではもう保革油を塗らなくなった」という情報を知りました。うぅーん。そして、保革油を塗った50年後はまだ誰も見届けてないわけです。
 やはり、本の利用の方針を立てないと、一歩も先へ進めないと思いました。私の本の場合は、背表紙を含めて本の中身をあと20年美しく眺める、という目的を私一人が決定すれば、それでいいわけなので。革の状態を再確認して、保革油を塗ることにしました。しかし私のやり方が正しいかは、自信がないです。あくまでも自分の蔵書だからできるというものです。
 まずは、本屋さんからついて来たビニールやグラシンは外しました。それだけでも、気づかなかったことに気づきました。背が固い本は、120度以上開かないほうがいいので、書見台を使って作業してます。

 マイクロファイバーの布で、保管庫から離れた場所でクリーニングしながら状態を見ました。埃は酸化の元なので除去。本棚も拭きました。

 かびっぽくなっていた紙函があったので、アルコール塗布で、かびの根を断ちましたた。

 見た目が悪く外れている部分は、それ以上剥がれたり欠損したりしないように、JadeRでくっつけました。JadeRはもし取り去りたい場合は水で除去できる可逆素材です。他の部分につけないように注意してスパチュラで少量差し込んで、ヘラで抑えたら、私の所に来た本の価値が上がったみたいに見えたけど、その結論は50年後に。


 マーニーの保革油を塗り、本を立てた状態で乾かしながら浸透を一日待ち、その後、空拭きしました。ツヤっと美しくなったと思います。20年後どうなっているかわかりませんが、その他の条件も悪いので、これの影響だと特定もできないんじゃないかな。私にとっては、美しさと愛着が増しました。


 そして、気になるものにはグラシンをかけました。傷んで粉っぽい赤い背革の、粉が周りを汚さないように。また、良い状態の本が、手で触って見ているうちに傷まないように。

 HPCは取り寄せ中なので、粉が出ている革に実験的に塗ってみようと思っています。だめならこの背革は交換できるし、どのみち交換しなければいけないくらいの状態だし。続きはまた、一か月後くらいかな。

2017年1月13日

古い洋本が壊れないように閲覧する方法

新年の初仕事は、本に優しくする贈り物です。大きな古い洋本に当てはまる話ですが、一般に、本を閲覧する際、本の表紙は180度開くことが可能です。ただし、本を動かしてみて、背表紙と本体の紙との間に隙間がなく、くっついている本の場合、本の表紙をぱかっと開いて手を離すと、本の厚みがあるために、この状態では表紙を180度以上開いたことになっています。下写真で、本の表紙が一直線ではなく、それ以上開いていますよね。本の厚み分、余分に開いています。すると見返しや表紙に負担がかかり、この部分が切れてきます。紙が重いほど、厚みがあるほど、利用が頻繁で愛読されるほど、症状は進み、紙にひびが入り、見返しが切れ、ついには、表紙が取れてしまいます。(20世紀以降の本は、この問題に対して進化して、だいたいは、本の背と本体の間に隙間を作るように設計して製本しているので、こうした危険はありません。)

これを回避するよう、本の展示に使うような、本を160度くらい開く閲覧台を設置する方法もありますが、おおがかりですね。
そこで、本に優しくする、簡易的な台を作りました。開いた表紙の下に、本の厚みに応じて、一枚なり二枚なり、高さ合わせになるものをかましてやれば、表紙は180度以上開かず、これまでとほぼ変わらない感覚で、本を閲覧することができます。これで安心です。見るたびに本が壊れていくのは嫌だし、かといって本を開かないでいるなら、何のために本を持っているのかわからないです。


この台は、スチレンボードを芯にしました。たとえば木の板のような重いものを芯にすると、万一取り落とした時に本を傷めることになりかねませんが、軽いものなら安心だし、取り回しもしやすいので利用されやすいはず。本の紙の重さ以上の力はかからないので、これくらいで芯の強度は十分だと考えました。


外側は、革で包みました。本の革表紙に触れるものなので、革かネルか布か、と考え、埃がつきにくく、使うのが楽しくなりそうな、革にしました。折り返し部分と、縁をすきました。「不思議の国のアリス」で革すきを鍛えられたので、私にとって革すきはもはや瞬間芸です。

裏は、包んだままの革の厚みが不ぞろいですが、そんなに厳密さが必要なものではないので、使う楽しさ重視で。
表には装飾箔押しを施しました。クラシックな古典柄のワンポイントを、フォイル箔で。あくまでも本の引き立て役として控えめに。箔があると、薄暗い書庫でも存在感を発揮するので、見つけやすいし、ちょっときれいだから使おうという気に利用者がなってくれるだろうと思います。この書斎の場合、美しくないと、見える場所に置いておかれないだろうし、訪れる人も手に取ってくれないだろうと。そうした意味で革と箔押しで、ちゃんと使ってもらって、本に優しくするように、と。この台はLe Petit Parisienにあります。皆さんの近くにもしこんな古い本があったら、何かを高さ合わせにかませて、本に優しくしてね。

2015年11月4日

昭和豆本が壊れて修理しました

本の修理
 私個人が所蔵している本を、自分で修理しました。手のひらサイズのハードカバー豆本『洋酒マメ天国』(サントリー発行)です。
本の修理
 修理前の本の状況です。綴じが外れて、ページが取れてしまいました。糊は経年変化で劣化しています。この本が壊れた原因は、糊で直接本の背につけてある構造だから・なおかつ紙が逆目で使用されているから・なおかつその紙が厚いから、です。豆本に使用されている紙が本の大きさに対して厚手なので、通常サイズの本で考えれば倍くらいの厚みで逆目で背に糊付けされていると想像すると、閉じ開きのたびに紙に負担がかかって、「そりゃー壊れるわー」ということになります。
本の修理
 本を開くたびに、ぱらぱらとページが取れそうなので、そっとしていたのですが、このままでは読めないので、修理することにしました。本がバラバラになると、取れたページの散逸の恐れもあります。
本の修理
 ついに後ろのほうまで、外れてきました。「綴じられていて読める」という本の機能が失われているので、そっとしておくんじゃなくて修理の必要があります。本のデザイン、内容、活版二色刷印刷のクオリティに対して、製本のクオリティが低かったと言わざるを得ない結果が出ています。といっても、洋酒マメ天国全冊が、こんなふうにページが外れて崩壊するということはないようで、他の方の所蔵本を見せてもらったら、本は穴背に仕上がっていて構造に問題がなく、ページが取れそうな気配は見られませんでした。私の本が「はずれ」だったみたいです。
本の修理
 私のは、見返しののども、1センチくらい紙がたりていない個体です。
本の修理
 扉のノリも、奥まで入り過ぎて開きが悪い物でした。これはもしかして正規のエディションではなく試作程度の物が流通してしまったのかも、など当時のことを想像するしかありません。でもこの本は、当時のチラシを見ると、必ずしも酒屋さんの「おまけ」ではなく、バーなどで販売されたり、定期購読も受け付ける有料の本として案内がされています。当時の女優さんが宣伝文を寄せているチラシを見ました。
本の修理
 私のはなにしろ、表紙も、機械か何かでうっかり挟んでしまったような跡がついているので。他の個体を見るまでこれがデザインだと思っていました。なおジャケットのグラシンは古本屋さんがかけたものなので、本の保存に適したニュートラルグラシンに架け替えました。
本の修理
綴じを直すので、いったん全部のページを外しました。表紙側に見返しだけ残して中身を取り出しました。
本の修理
 ページをバラバラにして、古い糊を外しました。
本の修理
 紙の本体を傷めないよう、カッターの刃と逆側でカリッカリッと気長に物理的に除去しました。古い糊が残っていると新しい糊が入らないので、根気よく取りました。
本の修理
 ボール紙を両側に当てがって、プレスに背を上向きに挟み、直角をちゃんと揃えてから、ピラニアンノコで目引きしました。
本の修理
 ぎざぎざに引いたミゾの中へボンドを塗って、これが新しい糊綴じになります。
本の修理
 もしもこれまでと同じ形で、ハードカバーの内側にこれを直接糊づけして戻したら、またいつか同じように壊れるでしょう。私がしているのは修復ではなく、修理なので、本の構造を変えて、本を利用できるようにして直しました。クータをつけて、穴背の構造に変えて、中身を表紙の中へ戻しました。見返しの長さがのどで1センチたりないのは、似た色の和紙でつぎたしました。「開きが悪ければ修理した意味がない」。ちゃんと危なげなく開いて読める本になりました。この本の下にあるのは、同じクラスで修理されていて、同じ日に修理が終わった本です。
 本の修理と保存のレッスンに、5年間通いました。二週間に一度、二時間のレッスンで、自分の中での達成率は7~8割かなというかんじで、あとの2~3割を埋めるには5~10年くらいかかりそうに感じたので、本の修理はここまでにすることにしました。10月から、デコール(金箔押し装飾など)のレッスンに通い始めました。デコールは華やかそうに感じたのですが、いまのところ、やっていることは、本の修理よりもむしろ地味なほど地味に思われます。

2014年7月4日

『ソフィーの不幸』修理が終わって幸せな本に

本の修理
前回の修理の続きです。いろいろあるけど、手を動かしています。今週は、一年近くかかった『ソフィーの不幸』の修理が終わり、本として読めるようになりました! うらやましいと言われる本になりました。
本の修理
表紙タイトルは、オリジナルから紙一枚はがして貼りました。背タイトルは、表紙のカラーコピーです。表紙ボールも表紙布も、新しい素材です。おそらく本ができた当時はこんな明るい黄色だったろうという雰囲気で仕上がりました。オリジナルは黄色の紙表紙で、背表紙は失われていました。フランス語の本だから「読み上げ」だろうな、とありそうな位置に貼りました。
本の修理
オリジナルは表紙と中身がバラバラになった状態で、見返しの紙もなかったので、新しい素材で見返しを作りました。できるだけ似た紙を選びました。
本の修理
手を離しても開く本になりました。
本の修理
本のノドの部分はこんな動きをします。和紙の足をつけ、平綴じ。本の背は背ボールにつけました。本文に穴の見える箇所が、オリジナルの針金綴じ位置で、これでは本が開かなかったでしょう。和紙の足をつけたので、本の仕上がりサイズはオリジナルよりも和紙の足ぶん横幅が広くなりました。
本の修理
1936年に印刷された本です。これで、めでたく完成! あとは私がフランス語をもっと勉強するだけ!

2014年5月26日

『ソフィーの不幸』の本の修理

また本の修理の話になりますが、修理のレッスンで直している本が、ようやく形になってきました。それまでずっと下ごしらえで、ある時、一気に形になる瞬間ってあります。それで写真を撮りました。
本の修理
12レッスンぐらいかかって、形になってきた瞬間がこれ。元は表紙が取れた状態。天地30cmくらいの大型本で、私が扱った中で最大サイズの本になります。表紙は新しく布で作り直しました。何度も書きますが、私がしているのは「修復」ではなく「修理」です。修理は、「本の利用のため」という目的のために行っています。

本の修理
新しい表紙と、本の中身とはまだつけていません。こんなかんじに合います。古い表紙をそのまま使っては、本の利用に不便なので、新しい表紙を作りました。本が作られた当時の黄色い表紙枠に近い色で、素材は紙ではなく布にしています。

本の修理
扉ページ。

本の修理
中はこんな挿画本です。

本の修理
和紙で足を全ページにつけて、糸で平綴じに綴じ直しました。元の本は、針金綴じ。ホッチキスが腐ってぼろぼろになって、綴じの役割を果たさなくなっていたのを外して取り去りました。それをそのままの位置で綴じ直すのではなく、のどあきが狭いので和紙の足をつけました。元のホッチキスの位置は、さびが移って茶色くなっている箇所です。この位置で同じように綴じ直しても、本文紙がもはやもろくなっているので、本を開くために紙を曲げたらそこで紙が壊れてしまいそうです。一つの修理が、次に本が壊れる原因を作ることがあります。「元どおり」にすることで開けない読めない、また壊れる本になっては、「利用するため」という修理の意味がないので、読める本にします。

本の修理
外れてしまっていた表紙の、タイトル絵は、はがしてまた使います。

本の修理
タイトル絵を曲げないように、逆側からはがします。

本の修理
表から見てみるとこんなかんじですが、この姿勢では作業は危ないのでしませんよ。

本の修理
これくらいボール紙がむけました。ちなみにボール紙は逆目で使用されていました。

本の修理
これを、水を入れたバットに入れました。絵を下にして、透明なアクリル板に載せて沈ませてあります。

本の修理
一晩たつとこんなかんじになっていました。

本の修理
これも絵と逆側から作業しています。水の力が浸透していて、だいたいするーっとはがれましたが、少し残ったのを指先でくるくると優しく取り去ります。ある程度取ってから、見えづらいので、アクリル板に載せたまま水の外へ出して作業を続けました。

本の修理
新しい水を入れたバットに沈めて、細かいくずを指先で洗うように取ります。

本の修理
板に挟んで乾かします。続きは、また今度。

2014年5月15日

書肆ユリイカ版の稲垣足穂全集はしゃれた装丁

本の教室
さて、アリス特装版豆本は、東京堂書店に並んだほか、言壺通販ショッピングカートにも入りました。タコシェには、壜入り極小豆本「赤い鳥」シリーズなどを納品しましたので、お近くにおいでの際にはぜひお立ち寄り下さい。そして先週土曜は自宅教室でした。休憩時間には、アメリカンチェリーのパウンドケーキに、アイスクリームと自家栽培のミントを添えて。

ところで、文学フリマで入手した本を読み切らないうちに、ネット通販で古本を買いました。書肆ユリイカ版の「稲垣足穂全集5」を私は持っていて、5月になるたび、『彼等』と『兎』を読みたくなる。とても不思議な後口の、かつて近くの時空にいてすれ違っていった人たちへの、回想の物語なんです。書肆ユリイカ版だと、文章の内容がすーっと沁みてくる、魔法の組版がなされています。全集の1や13も書肆ユリイカ版で読みたくなりました。以下は、本の保存について。
本の保存
通販購入なので、本を見るのはこれが初めて。まずは状態を確認します。ケースから本を引き出すと、グラシンが焼けていますね。
本の保存
グラシンが変色していて、本は大丈夫な状態でした。このままこのグラシンをかけていると、グラシンからしみが本に移ってしまいそう。グラシンの中には酸性が強いものもあると聞きます。このグラシンは、外すことにします。「これがもし、本が作られた時からのグラシンで、本の一部かも」と思ったら、グラシンは本とは別の場所で気が済むまで保管すればよいでしょう。本は、保管場所としては、できるだけ地面から、かつ家の天井や壁から、離れた所で保管するのが理想的ではあります。
本の保存
小口など埃がつきやすい場所をクリーニングします。マイクロファイバーの「べっぴんさん」が最良です(私が持っているのはそれではないですが)。本の内側に埃が入り込まないよう、しっかりと締めて(脇に抱えてもよい)、乾いたクロスで小口を拭き取ります。こうするのは、「埃」ってものが紙の酸化をもたらす物質だから。汚れのついていない、きれいな状態にします。
本の保存
本の中は、汚れはそうありませんでした。もしも新聞紙など、酸性の紙が栞として挟み込まれていたりしたら、その跡がしっかりついてしまったりするので、抜き取ります。中身を見ると印刷がちょっとへたっぴいな部分もありました。インキが裏にまで抜けてる。というか紙の選択の失敗? 一折だけ別の紙になっている本もある! 奥付をちら見すると、印刷所は巻によって変わっていたりします。出版の苦労がちょっと見えるようでしたが、中身に入っていくのは後にして、まずは自分が安心して触れる状態にします。
本の保存
「自分の利用のため」という目的に沿って、常に方針を立てます。私はこの本を茶の間で読みたいので、私が安心して読める状態にします。自分が触れることで本を汚さないという安心が私は欲しいので、「ニュートラルグラシン」という、紙の保存に適したグラシンを本とケースにかけることにしました。ちょっとお高いグラシンですが、個人で使用する分量ならたった数百円です。以前一冊だけ買った「5」は、大阪の老舗店からで、送付された時点で美本に見事にグラシンがかけられていました(在庫があったらまたここから買いたいものだった)。これを真似て、グラシンがけしました。グラシンの厚み分、ケースの中身が増えますが、ケースが崩壊の気配もなくちゃんと収まっていることは「5」の数年の観察で確認済み。グラシンを私のような素人がかけていると半日仕事でした。作業しながら、古い本を今のように清潔の観念が進んだ時代に売るのは難しいだろうなと思ってしまった。でも古本を読まないと、知の世界のほんの一部しか触れられないからね。

2012年12月28日

修理した本

豆本ツリーは好評に終了しました。豆本ツリーの最大の欠点って、実は毎年思うのですが物を探しづらいことです。年末の忙しい時期に、枝枝の間をこんなに探して!っていう企画はどうかと思いつつ、今年も快調な売れ行きでありがとうございました。
さて、言壺は今日で仕事納めです。忙しくて放置していた物事をここ数日でちゃんとしました。裏打ちした後の木の板を洗って干したり、欠けていたヘラをやすりで削り直したり、といった事をして、すっきりしました。
それから、これまでアップする時間がなかった絵本の修理の写真です。12月最後のレッスンで、無事にもう一冊、修理が完成しました! これまでの経緯はこちら。
続きの記事はこちら。
壊れた絵本の修理
新しい部材を用意しました。背ボールと、裏打ちしたクロスです。
壊れた絵本の修理
新しいクータを入れました。
壊れた絵本の修理
クータを入れた後、こんなふうに背は開いた状態。
壊れた絵本の修理
布の折り返しを入れるために、表紙ボールを二つに割っておきます。クータと見返しの間は、今、のりを入れてしまいます。
壊れた絵本の修理
背をつけました。
壊れた絵本の修理
上から見るとこんなふう。
壊れた絵本の修理
準備しておいたここの隙間に、布を折り返して入れてボンドでつけます。
壊れた絵本の修理
折り返して入れました。
壊れた絵本の修理
背表紙のタイトルパーツの、ボール紙をできるだけむいて薄くします。ばらばらのパーツは、定規を添えて、まっすぐに新しい紙の上に貼ります。
壊れた絵本の修理
背タイトルを布の上から貼れば、修理完了です。
壊れた絵本の修理
できました。また読めるようになった『ひとまねこざる』
壊れた絵本の修理
新しい糸が入ったページ。
壊れた絵本の修理
背側から見たところ。
壊れた絵本の修理
クータの動きや開きを確認。【↓before】【↑after】
壊れた絵本の修理
修理前:テープ修理をせっせとされていました。
壊れた絵本の修理
後ろ見返し。【↓before】【↑after】
壊れた絵本の修理
修理前:テープ修理から30年たって、テープが互いにくっつきあって開かない状態でした。
壊れた絵本の修理
【↓before】【↑after】
壊れた絵本の修理
修理前:テープ修理をせっせとしたために、背ボールやミゾが、加えられたテープの厚みを受け止められずに崩壊してしまい、綴じ糸が切れ、はずれたページでした。一枚のテープが次のテープを呼ぶ…。だから、テープ修理ではなく、薄和紙をヤマト糊で貼る修理をお勧めします。
壊れた絵本の修理
【↓before】【↑after】
壊れた絵本の修理
修理前:ここも修理のテープがくっつきあって開かない状態でした。このテープたちをはがすのに、5冊分で一年かかりました。その後の和紙修理と綴じ直しに、さらに一年。個人所蔵で子供時代の記念品だからできましたが、図書館での修理コストを考えたら、壊れた本は廃棄されてしまうでしょうね。
壊れた絵本の修理
修理した絵本は、これで3冊になりました。
壊れた絵本の修理
【↑before】11月に『自転車にのるひとまねこざる』の修理も終わりました。
壊れた絵本の修理
壊れた絵本の修理
【↓before】【↑after】ボールペンで絵の上に書かれた字は、紙を痛めるので消せませんでした。欠けたページは国会図書館の本のコピーで補いました。メンディングテープの中にすっぽりいた小鳥さんを、なんとかレスキューしたかったのですが、オリジナルはテープからはがすのは無理で、この部分はコピーです。
壊れた絵本の修理

壊れた絵本の修理
【↓before】【↑after】
壊れた絵本の修理

壊れた絵本の修理
【↓before】【↑after】テープはがし液が絵も溶かしたミスをしました。テープを取った後は、薄い和紙で切れたページをつないでありますが、和紙はほとんど見えません。
壊れた絵本の修理


さてさて、今年一年、お世話になりました。一月は七日から仕事始めになります。来年もよろしくお願いいたします。どうぞよいお年をお迎え下さい。

2012年11月9日

壊れた本の修理

さて、本の修理です。本の「修理」と言うと、たいていの取材で「修復」と置き換えられてしまって校正を入れましたが、修理と修復の違い。私がやっているのは、本の利用のための修理で、文化財の修復ではありません。本が再び読めるようになるということが一番の目的です。なので、不可逆的な方法(ボンドなど、再度はがせない接着剤で、新しい部材を入れる)で修理します。でんぷんのりで、古い素材をつなぎあわせた場合、何度か閉じ開きしたらまた壊れてしまうでしょう。資料館での展示や、研究のためにいざとなったらまた新しい部材を取り去って元に戻せるということが必要とされるならそれでよいけれど、読む本の利用のためにはその修理では手間をかける意味がない。一般に、でんぷんのりにボンドを混ぜて貼った部材を元に戻せるようにするには、ボンドを混ぜてよいのは12%くらいまでのようです。背まわりの、本の蝶番部分は、ボンド1割ではすぐ壊れてしまいます。
私が行って習っている修理と保存のクラスには、専門図書館の方が多くいらっしゃいます。頻繁に使用されている本の、壊れてる本のパターンが、だいたいわかってきました。
本の修理とためによかれと思って貼られた粘着テープが、その後の本の崩壊に一役かいます。
私が今とりかかっている絵本も、同じパターンでした。
だいたい、見返しが切れる→そこに粘着テープを貼る→その部分だけが強くなってしまい、今度は一折目と二折目の境が切れる→そこにも粘着テープを貼る→また力のかかり方のバランスが崩れて、あちこちのページが取れてくる→取れたページを粘着テープでせっせとつける→背ボールが、粘着テープの厚みで膨らんだ中身を受け止められなくなってしまい、背ボールが外れる→背やミゾの崩壊
粘着テープで本を修理するのはやめましょう。和紙をでんぷんのりで貼りましょう。でんぷんのりは、乾くのに時間がかかる接着剤なので、貼ってすぐは「こんなに弱そうでいいのかな?」と不安になりますが、クッキングシートなどを貼りつき防止用に挟んで、一晩他の本の下にでも置いて、「押し乾かし」をしてみて下さい。驚くほどしっかりした姿で、軽いプレスの下から現れるでしょう。
本の修理の方法
「ちびくろさんぼ」はめでたく終わったので、今は「ひとまねこざる」を修理しています。ページの修理を終わって、かがっています。
本の修理の方法
この絵本も、見返しも、本文紙共紙なんですね。そのために、見返し&表紙も含めた「一枚」として、表紙がついたままかがっています。
本の修理の方法
折丁ごとに和紙で巻いてあります。茶色いのは粘着テープの糊による変色の跡。
本の修理の方法
背ボールも、この本の場合はまだくっついているので、ついたままかがっています。背と表紙との印刷の位置関係も保存するためです。
本の修理の方法
かがり終えましたー。リンクステッチです。背が和紙なので、糸を引きすぎると形が崩れてしまうので、難しかった。
本の修理の方法
本の表紙には、この後、背の部材を貼り込むための隙間があいた状態です。
本の修理の方法
こんなかんじにあいています。「帳簿製本」で、背のくるみが「初めてやるのじゃないみたい」と他の参加者たちからびっくりされて、「パッセカルトンと同じだから」と答えたけれど、実は本の修理と保存でも、いっしょでした。
本の修理の方法
まずは寒冷紗を入れます。
本の修理の方法
古本は、紙がよれよれで、四角くないから難しい。

2012年3月13日

ちびくろさんぼの修理と保存箱

書籍の修理と保存・実技
こういう修理の工程が見られるのは、貴重だと言われます。自分の本だから見せられるんですよね。依頼されたお仕事だと公開できない場合が多そうですから。さて、ほぼ一年かかって、延々と数冊分のセロハンテープ・メンディングテープ・絶縁ビニールテープの粘着はがしをやった後に、ついに粘着部分を全て綺麗にすることができました。ちなみにブッカーで修理された本も同じような運命をたどるようなので、粘着テープを使った修理はやめましょう。本を修理するなら和紙とでんぷんのりで。今の時点で、修理に取り掛かる前に撮っておいた本の状態(下側の白黒プリント)と比較して、自分が粘着をはがすのと一緒に表紙の印刷もはがしてなかったことを確認してほっとしました。上右は、ギャラリーみずのそらで借りた綺麗な『ちびくろさんぼ』本の表紙のカラーコピーです。これで表紙の欠けを補完しようと考えています。
書籍の修理と保存・実技
裏表紙も、今の本の状態(上)と、修理前の写真(下)とを比較して安心しました。
書籍の修理と保存・実技
内側もたとえばbefore-afterはこんなかんじ。
書籍の修理と保存・実技
欠落していたページ部分は、こんなかんじ。みずのそら本のカラーコピーを入れて綴じつけました。
書籍の修理と保存・実技
さて、いよいよこれで綴じ部分はよいので、本にしていきます。寒冷紗の上にクータを貼ります。帳簿製本と同じ一重のクータを入れることにしました。袋に作らずに、紙を折っただけ。FB堅紙90kg(一重クータだからこの厚み)
書籍の修理と保存・実技
背部分には水ときボンドをつけず、両側のひらひら部をつけて、穴背に仕上げます。
書籍の修理と保存・実技
まだ表紙と中身との間に、隙間はあいています。次の工程では、素材は表紙の上にかぶせて貼るので、今、この隙間をくっつけてしまいます。ただし折り返しをしなくてはならないので、天地20mmくらいはまだつけません。
書籍の修理と保存・実技
表紙ボールとクロスは新しい素材です。表紙ボールはAFハードボード0.9mm、クロスはバクラムでちょうどの色味のがなかったので製本用裏打布。
書籍の修理と保存・実技
後で折り返しをしないといけないので、背ボールの斜線の部分にだけ水ときボンドをつけて、まずは背ボールをくっつけます。
書籍の修理と保存・実技
背ボールをつけたら、次はひらへののっかり分・みぞつけと、折り返しとを同時に。
書籍の修理と保存・実技
作業して、こうなりました。ふう~
書籍の修理と保存・実技
あとは、折り返し部分にスパチュラで水ときボンドを差し入れてくっつけました。このように、私のこの本の修理では、水ときボンドを背まわりに使い、新しい素材を本文や背に入れていますが、後日この修理をはがすような、文化財の研究に必要なような可逆性は求めていません。でんぷんのり90%くらいまででないと戻せないようですが、でんぷん9割だと、私がこの本を利用するための強度が保てないと考えます。閉じ開きしてまたすぐに壊れてしまったら今の修理の意味がないので、私の利用を優先します。どこまでがオリジナルで、どこが新しい素材なのか、は今回はわりとひとめでわかる状態になっていますし、記録も残します。この後の工程としては、表紙の補修をしますが、それはまた次回。

それから、年末大掃除からの続きです。家用に保存箱を買いました。いろいろ考えたすえ、私の保存の方針は
・保存の最大の目的は、私が利用をしやすくするため
・この家は湿度が多く、それが一番の本の大敵になっているので、これまでの本の置き場所は変えて、できるだけ高い所に上げる(落下には注意)。
・古書店からの梱包やクラフト紙の封筒は、酸性で本の保存によくないのでやめる。元グラシンも酸性なのでやめる。古書店が本にかけたビニールは紙が呼吸できないのでやめる。記録のために取っておく物は、直接本体に触れないように、別で保管する。
・豆本を一つずつ箱に入れてしまうと、本にたどりつくのが大変になるので、全体を大きな箱にまとめ入れする。本同志のこすれが気になる場合は和紙などで包む(ビニール袋に密閉すると紙が呼吸できないのでNG)
・箱は積み重ねられる強度のある、アルカリバッファのある紙がよい
実はこの保存の方針を立てる前に、かびちゃった函を無水エタノールで消毒したりしてました。
書籍の修理と保存・実技

保存箱は、資料保存器材にシェル箱をB段で作ってもらいました。AFエンベロープも同時に購入し、細かいものを入れています。
あとはIKEAのテーブルを組み立てればこの部屋の作業性がぐっとよくなるはず。
資料保存用の箱

資料保存用の箱

資料保存用の箱

2012年2月1日

ジョージとさんぼの修理・続き

これまでの経緯はこちら(下にスクロールして以前の記事が読めます) ようやく、長かった粘着テープ取りも収集がつき、いよいよ組み立て修理に入りました。組み立てに入る前に、脱落してなくなっていたページを、調達しました。
書籍の修理と保存・実技

『じてんしゃにのるひとまねこざる』には、外れ落ちてなくなったページが1枚ありました。そこで、できるだけ近い版で該当するページをコピーしました。市立図書館の児童書コーナーには、新しい版があります。それを見ると、本のサイズも大きくなって、文字は横書きで、細い丸文字のようなフォントで、画の発色も違い、画と文字の組み方も全然違っていて、もう全く別物の本でした。テキストと絵のソースは一緒には違いないが、物体として別物……という、不思議な感覚でした。ついでに原画の復刻本も見ましたが、原画に忠実だから子供が愛せたかもやっぱり別物で、絵と文字をどう配置するかという編集やブックデザインの部分が、いかに影響していたかと思いました。いろんな版を見てみましたが、私は昭和40年代の、私が生まれる前から家にあったこの時の岩波の編集によって、ジョージを好きになったので、この時の版に愛着があります。大人の目で見ても、この時の版組や紙質、判型なども含めたバランスに至るまで優れていると思います。この本がぼろぼろになってテープだらけになっても、うちの姉が、容易にこの本を捨てなかった理由に納得しました。テープだらけで、そのテープも変質して取れかけて、粘着だけが残って紙を痛め、本を開くたびにページがどんどんばらけてきそうな状態で、このままでは取っておいても読めない。個人の思い出として、再度閲覧可能な形に戻して大人がたまに読む、というのが今回の修理の目的です。私がしているのは文化財の修復ではないので、可逆性(後世にした修理を必要とあれば取り去って元の状態に戻せる)は求めずに行います。それよりも、危なくなく(ページのこれ以上の脱落などがなく)閲覧可能な形にすることが目的です。個人蔵書で、閲覧する人は限られているので、図書館蔵書ほどヘビーユースな物としてがっちり直す必要もないです。
さて、欠けているページを埋めるために私が利用したのは、国立国会図書館の複写サービスです。
書籍の修理と保存・実技
国立国会図書館の検索サービスOPACで検索すると、『ひとまねこざる』の昭和31年の版が、上野の子供図書館に保管されています。そしてこの版は複写不可となっています。しかし、デジタルでスキャンしたものが国立国会図書館のOPACから読み出せて、その場でページ指定して出力することができます。実は国会図書館に行かなくてもできたようでした。
出力したものは片面印刷なので、これをキンコーズに持って行って、上質紙に両面コピーして、本に入れる新しいページにしました。
書籍の修理と保存・実技
なくなっていた表見返し一枚は、出力もしましたが、色味が違ったので、自分の本の後ろ見返しをコピーして作りました。
さて、もう一冊、ページが脱落していたのが『ちびくろさんぼ』です。これは、ギャラリーみずのそらに年賀状展で行った時に、近い版をなんとカフェスペースの本棚に見つけまして、快くお貸しいただきました!
書籍の修理と保存・実技

書籍の修理と保存・実技
ぐるるる…が、なくなっているページです。
書籍の修理と保存・実技
古い版(私の本)の方が、みずのそら所蔵本よりも、マゼンタが強い印刷です。昔の本は角丸だったかのように見えますが、元は四角で摩耗しただけみたいです。本は丁寧に扱うようにと子供の時から何度となく聞きましたが、なんでこんなに本の角がないんでしょ。私の中では、丁寧に本を見ていて、末っ子だけがまだ文字を読めないけど本にかまいたがったという美しい記憶になっています。
書籍の修理と保存・実技
驚いたことに、昭和43年の私たちの本は折丁になっていて糸とじでしたが、昭和50年の借りた本は、のり綴じでした。しかも、「ニカワっぽい接着剤だね」とコージ先生。上の写真でも、新しい本は開きが悪くてページが立っています。子供の本でのり綴じか…。ニカワは耐久性がない(経年変化で劣化する)ので、この先しばらくしたら、ページがばらばら外れるかも。岩波はその後、糸綴じにまた戻ったのかな?
書籍の修理と保存・実技
うちの本は背中も崩壊していて、寒冷紗がむきだしです。
書籍の修理と保存・実技
綴じ糸もゆるゆるなので、古い糸はもう切ってしまってかがり直しになります。修理の和紙は、楮紙の目を、裂け目にまたがるように貼ります。つまり本の背に対して、紙の目を横に取って、テープ状に切り、薄いでんぷんのりで貼ります。
書籍の修理と保存・実技
新しいページも組み立てました。折丁の外側に行くほど、紙が痛んでいる傾向が見事にどの折丁もありました。外側の紙にはどれも、見返しの補強でやるみたいに、和紙をぐるっと巻きました。
書籍の修理と保存・実技
こんなかんじに、四枚一組の折丁になってます。下左の紙は新しい紙です。わざと古色をつけるようなことはしません。むしろどれが新しい素材でどれがオリジナルなのか明快なほうがよいという考えです。
書籍の修理と保存・実技
見返し紙も、折丁の一部で、表紙に貼りついています。この本の場合はちょうど背が取れていて、見返し紙も寒冷紗が入っていた所が取れた分、紙が浮いているので、あんまり難しいことは考えなくても、表紙と見返しがくっついた状態で、隙間を利用して和紙でつなぎ、これも一枚の紙として、折丁の一部にして綴じることができます。手品みたいです。
書籍の修理と保存・実技
四折目の最後の折丁の、このばらばら状態も、同じようにして和紙でつないで折丁にできます。これを、折丁という構造の理解なしに、外れた隣同士をテープでつないでいると、力加減でまた別の箇所が外れ、とテープ修理に際限がなくなり、のどが厚くなるだけで、本の開閉に必要な強度が得られないのでだめです。続きはまた、今度。修理にはまだまだかかります。

2011年10月23日

絵本の修理、丸背豆本

4月からずーっと2週間に1回、ジョージの絵本の修理をやり続けています。あまり進展がないので写真を撮っていませんでしたが、やり続けています。
書籍の修理と保存・実技
テープ修理のあとを、ワンダリック(ハンズ文具コーナーなどにあります)で掃除しています。ひたすら掃除しています。テープを取った後に、残った古い粘着剤がくせものなのです。これが残ってつるつるしていると修理のための和紙が貼りつきませんし、古い粘着が紙を痛め続けることにもなります。
書籍の修理と保存・実技
溶液のためにインクが溶けていますが、自分の本なので、修理の方針を自分で立てて、インクが多少溶けてもよいのでスパチュラの先で古い粘着剤をかきとっています。完全な絵は、新品の本を買えば見られますので。物としてこの本を残す形を選びました。とにかく進まないので必要最小限の時間で早く終わることをめざしています。ま、年内には。ともかくもうちょっと掃除しています。
書籍の修理と保存・実技
久しぶりのブログ更新なので、話がたまっています。
さて、10月14日、神田へ「武井武雄『地上の祭』はいつ出版されたか」の話を聞きにいきました。その途中で、かげろう文庫に立ち寄り、ピーターラビット絵本が出ていたので速攻で買いました。(私の活版本もまだあります。)これもジョージと同じくらいの頃からうちにあった懐かしい絵本だなあ。判型が今となっては豆本のちょっと大きいめくらいに感じられて、本の造りを再度身近に置いてよく見たいと思っていたので、いいタイミングでした。そうしたら、鳥肌ものの話を聞きました。ビアトリクス・ポターは出版にあたって、世界どこでも、このサイズでこの造本で、全ページオールカラーで出版することを求めたそうです。たしかに、ピーターラビットの壊れた本って目にしたことは私はないです。一折りで、真ん中を糸で綴じてあって、見返しも本文と一緒に綴じてあります。小さくて厚手の紙なので、指にひっかかって破れることもないし、子供の画帳になることもないし。このサイズでオールカラーの本なんて当時は他に例がなかったし、今もこの造本は他に例がない。初版からずーっと、今に至るまで、この造本で続いているそうです。ポターすごい。
書籍の修理と保存・実技
そんな感動のさなかですが、この夏に買った洋本が、さっそく壊れてしまいました。花布も寒冷紗も本体から外れてしまって。実用的に使いたい本なのに。
書籍の修理と保存・実技
これは一時間くらいで直せました。本はそのまま、背に木工ボンドを差し入れ、新しく作ったクータを入れました。修理には、手品のような技がたくさんあります。
書籍の修理と保存・実技
クータはちゃんとついたけれど、本を開くと本の背がこんな形になります。無理な姿勢っぽいなあ。
書籍の修理と保存・実技
さてさて、先週は大阪に行って中尾エイコ先生のレッスンを一日受け、革装と布装の丸背の豆本を作りました。本はかがってカッター化粧裁ちして持っていきました。私は、丸背の本は大きいサイズでブラデル2冊を作り、パッセカルトン3冊を作りつつありますが、この小さいサイズでの丸み出しと表紙づけは合理的にどうなるか、とても参考になりました。
丸背革表紙・布表紙豆本

2011年9月23日

『ひとまねこざる』の修理

 さて、写真は地味だけど実は案外反響の多い、書籍の修理と保存で、次の修理を始めました。
書籍の修理と保存・実技
 こんなテープ修理を35年くらい前に施された本がうちに何冊もあります。背は当時、身近にあった中では最も粘着力の高いビニールテープ(絶縁テープ?)。いまやテープが既に変色してはがれかけていたり、テープの表側が互いにべたべたくっつきあっていたりして、読んだりこのまま保存し続けたりには不安があります。
書籍の修理と保存・実技
 中はセロハンテープ。時々ビニールテープ。絵柄や文字の上にテープがかかって、変色しているのは、元には戻せない(変色を取ろうとすると絵や文字も消えてしまう)。
書籍の修理と保存・実技
 「おさるのジョージ」が主人公のこのシリーズは、今も岩波書店の新刊で買える絵本ですが、今の絵本では、ジョージがページの右から左へ走っていくように、絵を一部反転させています。物語の進行とジョージの進む向き、ページをめくる方向が原書の英語だと一致しているそうで。だからといって、日本語を横書きになぞせず、縦書きのまま、原画のほうを反転させるとは、やるな岩波書店。また印刷の色味も最近の本はなんか違う(単に色あせた本に徐々に慣れていったからかもしれません。)というわけで、子供用には新しい本があるのですが、この版に慣れ親しんだ私には、親しみのある記念品的な本です。またこの頃の本は紙や印刷、綴じなどのつくりもよいみたいです。
書籍の修理と保存・実技
 そしてこっちはいわずとしれた絶版本。一斉自主絶版のあと、2005年から復刻版が瑞雲舎から出ていますが。私たち子供は6歳の幅に入っていたので、上の子が本を読み、下の子は本に鉛筆やクレヨンで落書きをぐるぐるしちゃっていました。それも、絵柄の上のは消せないけど、まあ記念だからそのままでいいか、という方針でこの場合はいきます。
書籍の修理と保存・実技
 この5冊を修理します。まずは、表表紙・ページの中のテープ箇所など・裏表紙を、写真に撮り、プリントアウトして、いつでも作業中に参照できるようにしておきます。
書籍の修理と保存・実技
 そしておもむろにテープをはがしてゆきます。本のいたみぶりは「戦前の本かと思った」(by先生)ですが、約40年前の180円の本です。私たちに読み倒されてこうなりました。うち、絵本はわりとありましたが、ここまでなったのはこの5冊だけだな。テープは劣化しているのでそのままでもはがれますが、紙をつれていってしまうこともままあります。
書籍の修理と保存・実技
 スパチュラを、アイロンなどで少し温め、そのスパチュラを差し込めば、紙をいためることなく、絵柄の部分も、テープだけするするはがれてくれます!
書籍の修理と保存・実技
 「ジャン・ド・ゴネのような」(by先生)この表紙も。
書籍の修理と保存・実技
 温めたスパチュラでこのとおり。
書籍の修理と保存・実技
 ビニールテープの下から、背タイトルの一部も発掘できました。(続く…2週間後に)

地震津波による図書写真の被害とレスキュー

 ところで保存修復のクラスでは、当然、今回の被害状況の話にもなりました。片付けに追われてからクラスに戻られた方も。図書館の状況を私なりに比べてみると、どこも、上の棚から本が落ちたといえるようです(本棚ごと倒れた場合は、全て落ちた)。蔵書量によって、落ちた本が腰の高さになったり、膝の高さになったり、床が見えたりしたようです。しかも、重力による下向きへの落下ではないので、本どうしが互いに開いて重なって、ページとページがトランプでシャッフルしたみたいにからまっていたり遠く離れた地点に飛んで行っていたりしたようです。それで、積み重なって下になった本ほど、重みがかかって傷んだと。貴重な本は、揺れても落ちない下の棚に置いておく・箱に入れておくというのが一つの対策になるのでしょうか。国立国会図書館は稀少本は地下書庫にあるとか。
 津波被害のアルバムは、富士フィルムの人が写真の洗い方を 現地で指導に行っているとも聞きました。ぬるま湯で洗うといいとか、ただ温度が高すぎるとフィルムの表面が溶けてしまうので、冷水がいいという説もあるようです。
▼関連リンク
東京製本倶楽部・製本ブログ 図書館被害まとめや復旧活動報告など
史料ネット・おうちの思い出・まちの記憶を残すために 写真を救い出す方法・保存方法・コダック、富士フィルムへのリンクなど。水に濡れた古文書も乾かせるので捨てないで。

ついに『子供日記』修理できました

書籍の修理と保存・実技
さて、「書籍の修理と保存」実技クラス。『子供日記』の修理がいよいよ大詰めの大団円を迎えました。写真は例によって地味ですけどね。
溝に貼った紙が、二枚とも破けたので、紙ははがして、クロスでやり直しました。それが上左の本。修理前の状態の写真が、右側に写っているコピー紙。本の背が崩壊しかかっていて、開くとページが分解しそうで、表紙もあちこち剥げて黄ボールの地がむきだしでした。それらの上方で、板に貼られているのが、修理中にはがした背の紙です。
書籍の修理と保存・実技
修理中の本を開くと、後見返しの隙間があいていて、寒冷紗が見えています。どうしてこういう状態で終わっているかいまひとつ思い出せないのですが、前回のようすを見れば思い出すかも? とりあえず、目の前の作業をするとして、この隙間をくっつけます。
書籍の修理と保存・実技
今さらボンドは使いたくないでしょっということで、こいでんぷんのりで、体を支えにして、机の端で、両手を使って見返しを本のノドへ入れました。古い紙が、水気を帯びると破れそうで怖かった。見返し紙、逆目です。ギョーザの皮みたいなしわができらないように、おそるおそる。ついでにボール紙も逆目です。もうことごとく逆目で苦労させられたイメージがある本です。
書籍の修理と保存・実技
ついたかな~っと開いて見ると取れてしまうので、もう本は閉じたまま。背に元から貼ってあった紙を戻します。この作業で修理は終わりです。クロスはきれいに貼れているのに、この上にこのボロ紙を戻すの?と、少し躊躇が生じました。和紙ごと切り出しました。
書籍の修理と保存・実技
ボロ紙の裏側は、和紙の向こうに透けているように、赤い文字で倫敦の相場とか何とか印字されていて、広告紙なのかな、まあ裏紙です。元の持ち主が、背の崩壊を止めようと貼ったもののようです。一応、デザインを選んで継表紙風の紙を持ってきて貼ったのでしょう。でも、背の崩壊は背ボールの幅が狭すぎるという原因を根本から修理しないかぎり止まらなかったわけでしょう。
書籍の修理と保存・実技
でんぷんのりで、上から貼って、修理完了、ということで家に持って帰りました。
書籍の修理と保存・実技
乾くと、いいかんじ! 上から背の紙を戻せる作りだったために、新しい素材であるクロスが完全に隠れていて、古物の雰囲気はそのまま。
書籍の修理と保存・実技
それでいて、ちゃんと安心して開いて、読むことができるようになりました。
書籍の修理と保存・実技
裏表紙です。個人持ちの本で、毎日閉じ開きする本でもないので、表紙は頑丈さよりも、直しすぎないように雰囲気を保つ方向性でいきました。あー、これでちゃんと読める本になった。めでたしめでたし。5月から、長い道のりだった。半年かかりましたねー。今年じゅうに終わったー。

写真が地味すぎてbefore/afterがわかりにくいと評判の

11/27 箔押しワークショップ 13~15時開催 参加者受付中 あと2席あります 詳細・お申込みは言壺へ

 写真が地味すぎてbefore/afterがわかりにくい、本の修理クラス、前回の続きです。2回ぶんくらいの作業をまとめてお見せします。
書籍の修理と保存・実技
 表紙はばらばらな状態。元の背ボールは細すぎてそれが本が壊れた原因と考えられるので、新しい素材(保存修復用の、紙によい特殊紙)で切りなおしました。それを、違和感のない紙(これは普通紙)で、色味優先で選んで、継ぎました。切開した表紙ボールの内側に、折り返し部分をもぐりこませて、仕上げます。 
書籍の修理と保存・実技
 表から見て、違和感ないです。
書籍の修理と保存・実技
 本の中身にかぶせてみた状態。
書籍の修理と保存・実技
 本の中身の背には寒冷紗を貼りました。これを、やはり表紙ボールの切開部分にもぐりこませて、貼り付けます。同時に表に返して溝を入れます。この時に、普通紙ならではの、ハートブロークンな事件が発生しました(溝が切れました)。そこで、同じ紙をもう一枚貼って、二重にして仕上げました。
書籍の修理と保存・実技
 もぐりこませた状態。ここからまずは、平らな部分を貼り付けました。溝と見返し(可動部)の接着は、その次の段階で、次回やります。
書籍の修理と保存・実技
 表の見返しは切れています。これを戻す前に、破れを修理しました。右下の部分が、修理した破れ。(『そのまま豆本』に掲載のと一緒のやり方。)
書籍の修理と保存・実技
 この段階で、本全体が外ぞりになっていたので、見返しのキキ側をスポンジで濡らして、乾かして、内ぞりに直しました。
↓before 外ぞり
書籍の修理と保存・実技
↓after 内ぞり
書籍の修理と保存・実技
 表紙ボールはそもそも湾曲していて、計測したりが非常にしづらいです。書き記すとあっというまですが、習いながらとはいえ、これだけの作業に4時間かかっていて遅々とした歩みです。
 今日、夕方の雲がきれいでした。
書籍の修理と保存・実技
書籍の修理と保存・実技

本の修理・続編

前回の続きです。本の修理を少しずつルリユール工房で習っています。そういえば今日から新規申し込み受付では。
さて前回、糸で平とじ(三つ目とじ二つ)したところまでで終わりました。今回は糸の上に和紙を貼りました。そのまま見返しを貼るとごろごろするため。和紙を幅広く貼りすぎましたが修理としてはまあやりなおすほどではという「見た目の問題」と。
書籍の修理と保存・実技
 背ボールは、折れていたので、新しい素材を切り出しておきました。表紙が波打っているので、ものすごく測りづらかったです。
書籍の修理と保存・実技
 それと、和紙で表裏からくっつけて、アクロバティックに板張りした、継表紙みたいな背の素材が、ありました。
書籍の修理と保存・実技
 下が全部の表紙素材です。組み立てる前に、表紙の絵がはげて、地のボール紙の黄色がのぞいているところが、違和感があるので、なおそうということになりました。ここまでが前回までの作業をしっかり思い出す仕事で、そして今回手を動かした作業はこれ。
書籍の修理と保存・実技
 アクリル絵の具を使って、控え目に、色を載せました。この上から薄い和紙を貼って、塗ったところをカバーしました。
書籍の修理と保存・実技
 次回は組み立てられそうなので、どこに継の紙がついていたか、確認するようにと言われ、写真を探してみました。文字の上にも紙がかかっていて、明らかにこれは後で貼った紙だと確信しました。背ボールが低すぎて、背が壊れかけていたので、持ち主が修理のために貼ったのかもしれません。いかにもデザインされた紙みたいに見えたので、本に最初からついていた紙のように感じていましたが、絵にも文字にもかかって斜めに張られているので、この貼り込みラインをそのまま再現しないだろうと思います。そのまま何もかももどどおりに戻すわけじゃないという考え方がおもしろいです。
書籍の修理と保存・実技
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