MBS Award Winner Miyako Akai's Miniature Books
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『置換方程式』soldout

CHIKAN HOUTEISHIKI
7 3/4 by 5 inches, mimeograph of 2 colors, contents: Akai's original novel in Japanese with drawings by Mao Nakahira; published in 2004, 100 copies.

文:赤井都 絵:なかひらまお/A5変形判H196×W127×D7mm, 124pp., 120g/印刷・製本:Edit Net プリンテック 無線綴じ 孔版2色印刷/無線綴じ/2004言壺発行100部/1000円
本文紙は新聞古紙100%、表紙は古紙60%です。


 学生下宿を舞台にした『素敵で普通な青春小説』。バイト漬けの「あたし」が足を踏み込む『純文学ファンタジー』世界。
 この作品の原型は、文藝・群像新人文学賞の予選通過作品です。大幅に書き直した原稿用紙180枚分に、人気デザイナーなかひらまおのスパイシーな絵が組み合わさった意欲作です。

これが表紙です。プロのカバーデザイン。外での読書も愛蔵も違和感ありません。ナチュラルでマットな手触りです。

裏表紙です。机に置いても、人が読んでいるのをはたから見ていても、さまになります。

背表紙もよくデザインされていて、本棚で存在感を発揮するでしょう。薄く見えますが、原稿用紙200枚弱が詰まっています。

表紙をめくったところ。

もう1ページめくったところ。

さらに1ページめくったところ。この数式は、巻頭詩のようなものなので、雰囲気さえ味わっていただければ、細部まで逐一理解できなくても問題ありません。

もう1ページめくったところ。本文が始まります。本文は黒字、紙は薄めの再生紙で、目にやさしい適度な黄色味のある、ナチュラルな風合いです。わら半紙に似た雰囲気で、もう少し白く厚いです。印字はシルクスクリーンと同じ原理の孔版印刷で、原始的なテイストのある印刷方法です。見た目やページの指へのひっかかり具合は、昔の文庫本を思い出すようなかんじです。あえて作品内容から、「レトロフューチャー」というコンセプトで、微妙な味のある紙と印刷方法を選びました。一言でいえば懐かし粗悪系です。

本文冒頭:
 部屋ハ四畳半、床ハ畳、畳ハすりきれ、縁ハけばだち、けばだちハ足裏を刺した。
 部屋ハ暗い。空気ハかすかに匂った。その匂いハ何の匂いなのか、あたしハ思い出せない。でも全く知らない匂いでもなく動物でも植物でもないそれハたぶん黴や埃が室内の水分を吸収しまた空中に放出したあとの匂いだろう。
 窓ハ向かいの壁にある、窓を開ければ匂いハ出ていくだろう。今も匂いハ鼻から皮膚の表面から容赦なくあたしの中に入り込んでくる、露出された手の甲と手のひらハ匂いを吸っている、此処に立っているだけであたしハこの部屋に冒されていく。
(続く)


途中のページ。(p.92-93)

 『「ハ」は「イコール」じゃない』……貧乏学生寮を舞台に、住人たちが繰り広げるあがきの青春ストーリー。
 元バージョンを読んでいただいた読者さんの一人に、『筒井康隆が書いている、現代小説の三要素がある』と言われて、今回、本にまとめようと決意しました。現代小説の三要素とは、ファンタジー、笑い、実験的であること。
 ふだん純文学を読まれるかたにも、ふだんエンタテイメントを読まれるかたにも、どちらからも好評をいただいてきたという不思議な話です。私にも思い入れのある話です。
 すばる文学賞最終候補作『ひらひらひら』に共鳴したデザイナーなかひらまおさんもこの新作を非常に気に入ってくれて、何枚も真剣な絵を描いてくださいました。
 実際に手に取ってもらったときの驚きにしたいので、写真は載せませんが、「地図」と「系図」も巻末にあります。純文学で正統ファンタジーの気概です。
copyright(c)Miyako Akai,2004 all rights reserved


作品履歴

2004.11.14/ 第3回文学フリマで初売り。
2005.12/通販開始。「タコシェ」「かげろう文庫」に委託。
2005/オフ会・読書会などに持参し、好評お買い上げいただく。
2005.11-2006.2/第4回文学フリマ、文学フリマinなごやでじわじわと売れる。この表紙目指してブースに来る方も多いです。
2006/12/01/委託情報:中野タコシェに追加納品しました。
2007/02/10/委託情報:茶房高円寺書林』店内中央のアンティーク標本ケース横に納品しました。


『置換方程式』に寄せられたご感想の一部です

海坂他人さんより
 北千住から千代田線に乗り換え新お茶の水で降りる。途中いわゆるニコライ堂というものの前を通った。門前に二件、葬式の立て看板があった。神僕なにがしと書いてあった。もう記念物としてただ保存してあるだけなのかと思っていたが、聖堂としてしっかり現役であるらしい。
 さて予定のうちでも、小川町のかげろう書房には何としても行かなくてはならない。ここで「言壺」作品をゲットするのが今回上京の大きな目的である。去年の秋に文学フリマに行くはずのところ行けなかったので、今回こそはとひそかに期して来た。
 何ということもなく探し当てたが、シャッターが降りていた…残念。開店時間・休店日をちゃんと調べて来なかったのがいけない。時計を見るとまだ十時半である。ファストフードのつもりでいくと、そんな早くに古本屋さんというものは開かない。それではよほど夜遅くまでやっているのかというとさほどでもない。要するに商売気というもののありようが他の業種とは異なる。
 いちど近くのドトオルに待避、十一時を待って出直したところ、ちょうど開店したばかりのようで、店主が書物の詰まった木箱を戸口に運び出しているところだった。
 「言壷」作品は店の真ん中の低い台に陳列してあった。店内ではいい場所ではないかと思われた。私はまた壁際から先に探していたら何とも時代の貫禄のついた書物ばかりで、店を間違えたのかと思った。
 『置換方程式』一冊とミニ掛け軸一本をゲットする。
 あとは古書店街を縦覧してほどよい時間に大学に出向く。さすがにこれだけ古本屋さんが集まっているのは壮観である。私としては手軽な文庫本でもという感じだが、それも勿論あるけれど、重厚な全集とか単行本とか、天井際まで積み上がっていて、軽い地震でもあったら圧死者が出るにちがいない。
 神保町駅から新宿線に乗って市ヶ谷に至る。
 休み時間を利用して『置換方程式』少しずつ読む。講義の方は明治大正の女流文学なのに対して、こちらはもっとも新しいそれである。しかも周囲が大学的な雰囲気の中なのでちょうどよい感じである。

 表紙をひらくとまず、作品の成立過程が記してある。原形は1999年第36回文藝賞二次予選通過作品、それを改稿したものが2000年第44回群像新人賞一次予選を通過し、これをさらに書き改めて成立したという。
 改稿を経ていることだから作者としては不本意かも知れないが、新人賞の予選を通る作品とは一体どんなものだろうかという興味を持って、私はこの本を買って読んだ。
 いきなり私的な事情を記せば、数年前なんどか新人賞なるものに原稿を派遣したことがあって、一度も予選を通過したことがない。児戯に等しい代物であったということは今では充分わかっているが、それでは実際に、ある程度みとめられる作品とはいかなるものなのか。
 読後、いろいろな意味で、なるほどという納得があった。したがって私にとってこの書物は読む価値があったことになる。その事どもを少しでも整理して記しておこうと思うわけである。
 全体的な印象として、読みすすめるのが全く苦痛ではなかった。芥川賞候補作を読んでいても時々どうしても飲み下せないような文章がある。最近で言えば『野ブタ。をプロデュース』とかに比べればよほど読んでいて愉しい小説であった。
 極貧大学生の立川なる少女が「あたし」の立場から語っていくこの作品は、ストーリー展開にはほとんど頼らない。いろいろな事件が起こるが、どれも劇的な展開を見せて解決に至ったりはしない。
 たとえば、「あたし」が移り住んだ安下宿の隣人である吉野という青年、これはなかなか雰囲気がよさそうなのだが別に恋愛というほどの関係にはならない。また郷里の「家」からときどき連絡をよこす兄は、主人公を漠然とおびやかす存在であるが、これも別にどうもならない。「あたし」の部屋の押入に出現した、生命をもつ山吹色の埃の集団、この超自然的な存在も、何者だったのかは不明のままである。
 代わりにここには、日々の生活のたしかな質感が表現されている。「あたし」がふれる周囲の事物は、決してすべてが心地よく優しいものではなく、むしろその多くは苦痛であったり困惑を与えたりするのだが、彼女は自らの感覚を開きながらなんとかそれらと折り合っていく。その過程が一つの世界を立ち上がらせる。
 主人公は月七千円というオンボロの下宿に移り住み、吉野から無料のパンの耳や賞味期限の切れた豆腐をもらって食うという極貧ぶりであるが、それだから同情・共感できるというわけでは決してない。人にはそれぞれの生活があって、働き、食べ、眠り…という細々したパーツが集まって、日常というものは出来ているのであるが、それを単に再現しても芸術にはならない。その中でどのくらい新鮮な感覚を働かせているかどうかが問題なのである。
 またも私事になるが、この書物を読んでいる間、私は旅の空にあって毎日のように見知らぬ街を歩きまわっていた。世界との交感のあり方として、この主人公と共振するものを感じていたようでもある。(二月九日)
(かげろう文庫にてご購入 2005.2.20収録)

北一郎さんより
私ハ「置換方程式」まだ読んでいます。
こういう言語感覚で、表現することなど、とても思いつかないし、表現効果もまったく知らない刺激でした。
読みながら「ハ」は「・」「=」にしか読めないな。「は」ではない、と思っていましたが、後章で類似的な解説があったので、やっぱりそうだったのか、得意になったような、なんでそうなの? というような複雑な気がしました。
乾燥した表現力と視線に、やはり軽妙な才気を感じました。これは、文芸世界では、独立した赤井ワールドだと思いますので、どんどん開拓していってください。
(2004/12/20)

タカスギシンタロさんより
いま「置換方程式」を読んでいるところです。
“ハ”の“破”はどんな“波”をぼくにもたらしているのか…
なんてこと考えるのは後回しにして、ぐいぐい読まされております。
・・・
文学フリマで買った『置換方程式』(赤井都)を読み終えた。読みはじめてすぐに気づくのがカタカナの“ハ”の多用。それは日常とちょっぴり異なる世界との行き来を可能にし、そしてなにより、ありふれた出来事を、一度きりのいとおしい瞬間へと導く効果があるのではないかなあと思いました。赤井さんの作品をそんなにたくさん読んでいるわけではないが、現時点での代表作のひとつかも知れません。
(2004/11/30)

Sさんより
期待以上、以前読んだものより本当にボリュームアップしていて、
新人賞作品に見劣りしないと思いました。
(2004/11/24)

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