2014年5月28日

いい参考図書が出ています

最近入手して、さっそく役立っている本を紹介します。


『西洋の書物工房 ロゼッタ・ストーンからモロッコ革の本まで』貴田庄、朝日選書、2014年2月

長らく絶版だった伝説本が、朝日選書として入手しやすく登場し、勉強の絶好のチャンス到来です。「手編みの花布」「革装本」など、日本が西洋製本を輸入しながら落としてしまった物たちを、たくさんの図版を使用し、一つずつ説明してくれます。日本が西洋製本を輸入した時、既に工場制手工業の時代ですから、それ以前の「本の歴史」は入らなかった。だから日本で「何代も手製本をやっている工房」があってもそこだけ見ていては知らないでいてしまう、もっと長い本の歴史があります。ウィリアムモリスにも多くのページが割かれています。体系的な歴史知識は、「作る」レッスンを受けているだけでは知らないことも多いので、非常に参考になります。東京製本倶楽部でも好意的書評があった本。一家に一冊!


『デザインの自然学 自然・芸術・建築におけるプロポーション 新・新版』 ジョージ・ドーチ (著)、 多木浩二 (翻訳)、青土社、2014年4月

新・新装版。これまでに図書館で目にしていたことがあったと思う。今となっては手描き時代の図版を見ているだけでも良い。説明中に引用されている文章も良い。自然と人工の螺旋・黄金律を、比較整理でき、頭がまとまる。
私は20代の時期は、日本学術振興会などの研究員として都市計画研究室で過ごしていました。なので、小難しいルックスの本にあまり抵抗感がありませんが、タイトルで「うっ」と思ってしまった人にアドバイスさせていただきます。こういう、「難しげな本」は、店頭で見て自分との相性がよさそうかで買うかを決めると良いと思います。私の場合は、東京堂書店の一階で見つけました。実際に中身を見て、おもしろそう、と感じられたら入手して、「はじめに」から「あとがき」まで読み通そうとするのではなく、所有して、まずは図版をぱらぱらと見て興味のある図版の前後や、その章の文章を読み、あとはそばに置いておき、何度も開くのがいいと思います。

2014年5月26日

『ソフィーの不幸』の本の修理

また本の修理の話になりますが、修理のレッスンで直している本が、ようやく形になってきました。それまでずっと下ごしらえで、ある時、一気に形になる瞬間ってあります。それで写真を撮りました。
本の修理
12レッスンぐらいかかって、形になってきた瞬間がこれ。元は表紙が取れた状態。天地30cmくらいの大型本で、私が扱った中で最大サイズの本になります。表紙は新しく布で作り直しました。何度も書きますが、私がしているのは「修復」ではなく「修理」です。修理は、「本の利用のため」という目的のために行っています。

本の修理
新しい表紙と、本の中身とはまだつけていません。こんなかんじに合います。古い表紙をそのまま使っては、本の利用に不便なので、新しい表紙を作りました。本が作られた当時の黄色い表紙枠に近い色で、素材は紙ではなく布にしています。

本の修理
扉ページ。

本の修理
中はこんな挿画本です。

本の修理
和紙で足を全ページにつけて、糸で平綴じに綴じ直しました。元の本は、針金綴じ。ホッチキスが腐ってぼろぼろになって、綴じの役割を果たさなくなっていたのを外して取り去りました。それをそのままの位置で綴じ直すのではなく、のどあきが狭いので和紙の足をつけました。元のホッチキスの位置は、さびが移って茶色くなっている箇所です。この位置で同じように綴じ直しても、本文紙がもはやもろくなっているので、本を開くために紙を曲げたらそこで紙が壊れてしまいそうです。一つの修理が、次に本が壊れる原因を作ることがあります。「元どおり」にすることで開けない読めない、また壊れる本になっては、「利用するため」という修理の意味がないので、読める本にします。

本の修理
外れてしまっていた表紙の、タイトル絵は、はがしてまた使います。

本の修理
タイトル絵を曲げないように、逆側からはがします。

本の修理
表から見てみるとこんなかんじですが、この姿勢では作業は危ないのでしませんよ。

本の修理
これくらいボール紙がむけました。ちなみにボール紙は逆目で使用されていました。

本の修理
これを、水を入れたバットに入れました。絵を下にして、透明なアクリル板に載せて沈ませてあります。

本の修理
一晩たつとこんなかんじになっていました。

本の修理
これも絵と逆側から作業しています。水の力が浸透していて、だいたいするーっとはがれましたが、少し残ったのを指先でくるくると優しく取り去ります。ある程度取ってから、見えづらいので、アクリル板に載せたまま水の外へ出して作業を続けました。

本の修理
新しい水を入れたバットに沈めて、細かいくずを指先で洗うように取ります。

本の修理
板に挟んで乾かします。続きは、また今度。

2014年5月15日

書肆ユリイカ版の稲垣足穂全集はしゃれた装丁

本の教室
さて、アリス特装版豆本は、東京堂書店に並んだほか、言壺通販ショッピングカートにも入りました。タコシェには、壜入り極小豆本「赤い鳥」シリーズなどを納品しましたので、お近くにおいでの際にはぜひお立ち寄り下さい。そして先週土曜は自宅教室でした。休憩時間には、アメリカンチェリーのパウンドケーキに、アイスクリームと自家栽培のミントを添えて。

ところで、文学フリマで入手した本を読み切らないうちに、ネット通販で古本を買いました。書肆ユリイカ版の「稲垣足穂全集5」を私は持っていて、5月になるたび、『彼等』と『兎』を読みたくなる。とても不思議な後口の、かつて近くの時空にいてすれ違っていった人たちへの、回想の物語なんです。書肆ユリイカ版だと、文章の内容がすーっと沁みてくる、魔法の組版がなされています。全集の1や13も書肆ユリイカ版で読みたくなりました。以下は、本の保存について。
本の保存
通販購入なので、本を見るのはこれが初めて。まずは状態を確認します。ケースから本を引き出すと、グラシンが焼けていますね。
本の保存
グラシンが変色していて、本は大丈夫な状態でした。このままこのグラシンをかけていると、グラシンからしみが本に移ってしまいそう。グラシンの中には酸性が強いものもあると聞きます。このグラシンは、外すことにします。「これがもし、本が作られた時からのグラシンで、本の一部かも」と思ったら、グラシンは本とは別の場所で気が済むまで保管すればよいでしょう。本は、保管場所としては、できるだけ地面から、かつ家の天井や壁から、離れた所で保管するのが理想的ではあります。
本の保存
小口など埃がつきやすい場所をクリーニングします。マイクロファイバーの「べっぴんさん」が最良です(私が持っているのはそれではないですが)。本の内側に埃が入り込まないよう、しっかりと締めて(脇に抱えてもよい)、乾いたクロスで小口を拭き取ります。こうするのは、「埃」ってものが紙の酸化をもたらす物質だから。汚れのついていない、きれいな状態にします。
本の保存
本の中は、汚れはそうありませんでした。もしも新聞紙など、酸性の紙が栞として挟み込まれていたりしたら、その跡がしっかりついてしまったりするので、抜き取ります。中身を見ると印刷がちょっとへたっぴいな部分もありました。インキが裏にまで抜けてる。というか紙の選択の失敗? 一折だけ別の紙になっている本もある! 奥付をちら見すると、印刷所は巻によって変わっていたりします。出版の苦労がちょっと見えるようでしたが、中身に入っていくのは後にして、まずは自分が安心して触れる状態にします。
本の保存
「自分の利用のため」という目的に沿って、常に方針を立てます。私はこの本を茶の間で読みたいので、私が安心して読める状態にします。自分が触れることで本を汚さないという安心が私は欲しいので、「ニュートラルグラシン」という、紙の保存に適したグラシンを本とケースにかけることにしました。ちょっとお高いグラシンですが、個人で使用する分量ならたった数百円です。以前一冊だけ買った「5」は、大阪の老舗店からで、送付された時点で美本に見事にグラシンがかけられていました(在庫があったらまたここから買いたいものだった)。これを真似て、グラシンがけしました。グラシンの厚み分、ケースの中身が増えますが、ケースが崩壊の気配もなくちゃんと収まっていることは「5」の数年の観察で確認済み。グラシンを私のような素人がかけていると半日仕事でした。作業しながら、古い本を今のように清潔の観念が進んだ時代に売るのは難しいだろうなと思ってしまった。でも古本を読まないと、知の世界のほんの一部しか触れられないからね。

2014年5月6日

神保町の東京堂書店に納品しました

 今日、豆本を納品してきました。私の豆本は11種類。一階レジ横です。数ある本屋さんを一軒一軒見るうち、東京堂書店の本の並びのおもしろさが、だんだん私にもわかってきました。レジ前「知の泉」、二階、三階、どこも最高です。本との出会いがある本屋さん。本棚の並びもよく考えられていて、裏に回っていくのが楽しみ。いつ疲れても大丈夫なようにカフェ併設で和スイーツがあるのも貴重ですよね。
 8日には、タコシェに納品します。こちらは作品種類は5種類の予定。タコシェも本棚、品揃えがおもしろくて、場所もいいです。タコシェのほうが年齢層若いイメージですが、いまだにおもしろく感じてしまうから、ここはまだ卒業できないな。

 本屋さんってアイテム数多いからすごいなとしみじみ思います。最近、友人の豆本展で流浪堂にもぶらっと行きましたが、あの本棚もおもしろかった。こちらは古書+新刊本+ジン+ギャラリーでよかったかな? 古今東西本のセレクトショップというかんじで、自分の知ってる本と知らない本の入り混じり方が、本の世界は広いな~と感じさせてくれた。ほどよく知らない本があるのがポイント。
 文学フリマにも遊びに行きました! 秋葉原以来、かつ初めてお客さんとして行きました。楽しかったですね。知ってる人も知らない人もいて、まだいてくれたっていう安心と新しい世界と両方あった。収穫たくさん。しばらく読むものには困らないー。