MBS Award Winner Miyako Akai's Miniature Books
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朝露1ダース
 〜五百文字モノノケの口どけsoldout

Morning Dews
A5 size book, mimeograph of 3 colors, contents: Akai's original short novels in Japanese; published in 2005, 115 copies.

文:赤井都/A5判H210×W148×D1mm, 12pp., 32g/印刷・製本:Edit Net プリンテック/本文3色を使用した孔版印刷/ホッチキス中綴じ、裏表紙に番号入り/遊び紙あり/2005発行言壺115部 300円/本文紙は古紙100%、表紙は古紙75%、大豆インク使用、風力発電で刷っています

 

超短編個人集第三弾。長さを500文字前後に揃えて12編を収録。1ページに一話を配し、ページごとに本文刷り色を変えました。

「この寿司食べたら、連れてゆくからね。それでもいいなら食べな」…寿司婆に選択を迫られる(『連れてゆく』)
「マンホールの蓋に鬚を挟んで身動きつかなくなっていた天狗を助けたら、お礼に願い事を三つ叶えてやる、と言う。」…お風呂いっぱいのプリンをもらって幸せになれるか(『三つの願い』)
「見切れなかった夢の終わり部分」ばかりが朝の風に乗って吹き上げられてくる山で、「わたし」の拾った恋は。(『朝の土から拾う』)
「テントの中では、くまのロボットがピアノを弾いていた。」…一番欲しいプレゼントを求めて夜の広場をさまようこども(『クリスマスのくま』)
ほか、12の小さなかわいく辛いモノノケたちが、つるんとあなたの喉を通ります。せつなさ大さじで。

好評既刊『即興集@湖ノ底カラ降ッテキタモノ』『はしきれ』に次ぐ、超短編個人集第3弾。今度は、長さを500文字前後に揃え、せつない・恋しい・おかしい・ぞくっとする話、12編収録しました。

表紙はピンクの、紅茶かすが散ったファンシーペーパーに、灰色インク一色刷。

銀鼠色の遊び紙を経て、本文を開けると、一ページに500文字からなる超短編一話が配され、一ページごとに違う色刷になっています。

裏表紙左下にロットナンバーをスタンプで入れました。

装丁のコンセプトとしては、外側は退色したような影、内側が色鮮やかな実像です。


収録作品目次

1 夢見に出かける
2 クレナイヨモギの夜
3 午後の林
4 クリスマスのくま
5 春に降る雪なら桜の枝に
6 朝の土から拾う
7 生
8 金属バット
9 連れてゆく
10 さおだけ屋はなぜ潰れないのか
11 三つの願い
12 透明性交換事情

 2, 3, 5, 7, 8, 9, 11は、「500文字の心臓」自由題掲載作品・トーナメント・タイトル競作投稿作品を、改稿したものです。作品によってほとんどそのままのものも、かなり改稿しているものもあります。
 1, 4, 6は、個人サイト内「一日一話」に掲載した作品を、かなり改稿したものです。
 10, 12は純粋な書き下ろしです。


立ち読み

『連れてゆく』

 回転寿司だと思って入ったら、U字カウンターの真ん中で、職人が寿司を一つずつ握っていた。値段表がないので、かっぱ巻きとガリとをしょりしょり食べた。そのときU字の向こう側でしなびた婆さんが豪気な注文をする。職人せっせと手を動かし、できた寿司桶十一。「食べたい人!」婆さんが叫ぶ。
 「はい!」「はい!」両隣も、あっちもこっちも、居合わせた客十人全員が手を挙げている。
 「あの人は、ああしていつも振る舞うんだ」職人がぽそりと言う。  「はい」私も思わず手を挙げた。カウンターを越えて飛んでくる寿司桶。アボガドにあぶりサーモン、かいわれマヨネーズがとろり、海苔がぱらり。いやこんなおいしいの食べたことないよ! 一つ食べて絶句しているところで婆さんが言う「この寿司食べたら、連れてゆくからね。それでもいいなら食べな」
 一つ食べたところだよ! これ一つで後、断念するなんてできないよ! 手が止まらない口が止まらない。客全員、寿司桶を空にした。むろん私も。寿司婆は大きな財布を出して立ち上がる、「えびトロうに、アボガドサーモン、そっちもあんたも、皆行くよ」
 十一人ぞろぞろ。路地からも集団が出てくる。これまでに集められた人たちらしい。その一人が言う。寿司婆はきっと遠い危険な所へ行くんだ。別の一人が言う。いや、寿司婆は余命一年のはずだよ。さらに一人が言う。毎日毎晩、寿司婆は寿司屋にいりびたりだから、いつか日本人全員、寿司婆についてどこかへ行くんだ。
(617字)

copyright(c)Miyako Akai,2005 all rights reserved

作品履歴
2005.11.03/ 115部発行。メルマガ「言壺便り」購読者に、新刊先行予約方法をご案内。
2005.11.07/ かげろう文庫(神田)で初売り。さっそく何冊も売れたようで、ありがとうございます。
2005.11.20/ 第4回文学フリマ(秋葉原)で皆様にお買い上げ。“せつなくキュート”という評をお見かけする。
2005.11.25/ ですぺら(赤坂)「某」頒布会で皆様にお買い上げ。
2005.11.26/ タコシェ(中野)にも委託。
2005.11.30/ ショッピングカート調整出来、カートに入りました。通販開始です。よろしく。
2006.2.28/文学フリマinなごや(名古屋吹上)で、皆様にお買い上げ。ありがとうございます。
2006/12/01/委託情報:中野『タコシェ』に納品しました。
2007/02/10/委託情報:茶房高円寺書林に納品しました。


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