MBS Award Winner Miyako Akai's Miniature Books
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はしきれ(新版)soldout

HASHIKIRE (new edition)
3 by 3 inches, unopened pages, laser printing, text: Miyako Akai; illustration: Asako Sekine; 2006, 30 copies limited.

文:赤井都 絵:関根朝子/ H75×W75×D13mm, 168pp., 68g/  上製角背・天然石(縞めのう)と布の帯付き、袋綴じの本文紙を糸綴じ、限定番号入り レーザープリント/限定30部/2006.7.22発行/3,500

豆本:はしきれ

大人のシックな赤本です。 角度によって光り方に違いがある、パーリーな赤い表紙、 正方形の小さな本。手のひらに乗せると、重いです。上質なアートペーパーを使っています。

豆本:はしきれ
豆本:はしきれ
豆本:はしきれ

アンティーク縞めのうビーズと玉虫古布による帯を外して、中を開きます。

豆本:はしきれ

イラストレーター関根朝子さんによる繊細なペン画イラスト入り。甘すぎない、少し苦味のある話と、絵の相乗効果で、幻想風味が広がります。

豆本:はしきれ

全ページ袋とじ。色とりどりのページを切り開くと、文字やイラストが出てくる宝箱です。

豆本:はしきれ

ページを切らないと、文章も絵もつながりません。あなたの手で切って、この本の装丁を完成させてください。

豆本:はしきれ

いろいろな短い物語が入っているので、紙も次々と換えてあります。目から伝わるだけでなく、手触りもいろいろな宝箱。豆本でも文字を読みやすいレイアウト。

豆本:はしきれ

少し渋い話は、落ち着いた茶系のマーブルの紙で。近未来SFの話は、オーロラのようなキラキラ光る紙で読みます。

豆本:はしきれ

帯は、読書中は栞に。先端についている丸ビーズは天然石の縞めのうです。一つずつ模様や色が若干違う一点ものです。

豆本:はしきれ
豆本:はしきれ

通販では、郵送途中で破損しないようにアクリルボックスに入れ、もっとパッキンで巻いて、防水ビニールをかけてお届けします。(梱包の細かな仕様は予告なく変更になることがあります。)


収録作品

 懐かしく古びたテイストの幻想短編集。おばあちゃんの古布の箱を開けたときのような、長さも舞台もそれぞれな、短いお話を十九編収録。
 「はしきれ」
 「ギターの主」
 「流星の死」
 「花畠」
 「夜更けの流星」
 「夕方の流星」
 「倉庫街で聞いた話」
 「影の種」
 「牛乳と影」
 「ぶよぶよとしたもの」
 「喃島日誌十一月十四日」
 「夜の散歩」
 「子供の神様」
 「空が見えるところ」
 「洛西の穴場」
 「不適切な選択肢を追加」
★「食卓のレヌイ」(第二版のみ書き下ろし)
 「潮騒」
 「花ゲリラ暦」
 「宇宙」
★ あとがき(第二版のみ)
★印のついたものは、今回の第二版のみに入っています


立ち読み

「ギターの主」
 夜も更けたころ高い窓枠の下に寄り掛かってギターを聞いていた まだ練習しはじめらしい爪弾きがぽろぽろと街路に降る 黄色い光が丸い窓の形で石畳の中程に落ちている その光の中に猫の影が現れたと思ったら ひょいと影のまま窓の外に抜け出して なにくわぬふりで路上を進み始めた オヤ! 私はその後をつけた 影の猫は路地を横切り 並木道をまっすぐに歩いていく 飼い主に知らせるべきかと思ったが その人のギターより他を私は知らない 路面いちめん月が並木の影をたいそうにおもしろく変えている 妙に私の靴音だけが響くと思ったら 影の猫を既に見失い 一人で町外れの門を抜けるところだった 町を取り巻く川の流れにかすかなギターの音が混じっている のぞきこむと千々に砕けたお月様が丸く広がってホロホロと揺れていた

「食卓のレヌイ」
 日曜日、両親が連れ立って出かけました。私は家で宿題をしていました。夕方になって、大きな袋をがさがさいわせながら、両親が帰ってきました。晩御飯のフライドチキンと、新しいレヌイを買ってきました。
 レヌイは大量生産のタイプです。ローラーがついていますが、本体に対して小さいので、一度据えたらほとんど動かすことはなさそうです。両親は楽しそうに、レヌイをテーブルの端に転がしてゆき、スイッチを入れました。
 レヌイは話し始めました。ふたりは楽しそうに笑いました。少しダイヤルをいじってモードを変えたりしていましたが、すぐにデフォルトの3に戻して、フライドチキンの包みを開きました。レヌイは人の反応を声の大きさや熱などで測って、人を楽しませるおしゃべりを的確に行い、食卓を明るくする機械です。好みのことばや歌を登録することもできます。レヌイのプログラムにふたりは簡単に乗って、その日の晩御飯は、レヌイ一台が加わったおかげで、なにを話しているという内容もない会話なのに、いつになくなごやかでした。
 その日から、レヌイは食卓の同じその端に、定位置を占めるようになりました。
 忙しいふたりは、レヌイをデフォルトのまま放っておいてあります。私が朝御飯を食べるとき、前の日の夜から、レヌイがつけっぱなしになっていることがあります。ふたりの寝室のドアは堅く閉ざされ、ふたりはまだ眠っています。わたしが体重計を兼ねている椅子に座ると、マルチビタミンミックスのシリアルが184g、食卓のボールに排出されます。ボタンの一プッシュで、牛乳ということになっているDHAでできた白い液体が注がれます。
 それをしょりしょり食べていると、レヌイが勝手に話し始めます。今朝は寒いから風邪をひかないように気をつけて、とか、忘れ物はしないように、とかそんな、どうということもないようなことばをしゃべります。  もう、いつのことか覚えていないずっと前、母さんが、そんな事を幼い私に云ってくれたことがあるような気がします。その記憶が重なって、ちょっとほろりとしましたが、すぐに醒めた気分になりました。これは母さんではなくレヌイです。
 すると、レヌイは敏感に私の呼吸変化や汗分泌に反応して話題を変えて、通信先からニュースをダウンロードし、話し始めました。相手が私なので、経済や政治ではなく、友達に話して聞かせられそうな歌手のゴシップや、野生の猫が保護されたといったちょっといいニュースです。それにも私は白けた反応を返しました。
 レヌイがさらに話題を変えようとしてことばを途絶えさせました。私はぐちゃぐちゃのシリアルが半分まで減ったボールから目を上げて、隣の席の、埃と油にまみれた薄汚れたプラスチックと金属の塊を見ました。06:37という青い現在時刻の下に、好みのことばを登録するスイッチがあります。
 私はそれを押しました。
「登録したいことばを云ってください。どうぞ」
「母さんのばか」
「そのことばは登録できません。登録したいことばを云ってください。どうぞ」(続く)


第一版との違い
 第二版では、書き下ろしの『食卓のレヌイ』一話をプラスし、これまでの文章にも手を加えました。
 第一版の装丁も気に入っているのですが、今回、より本のサイズを小さくして、頁を繰ってお話を読むようにしました。これで、短いお話をもっとゆっくりとした速度で読むようになりました。さらに、そこに挿絵もところどころに出現するので、また第一版とは違った読書体験で、新しく各話と出会えます。

■製作販売経過:
2003/11/3第2回文学フリマ初売りで第一版限定40部完売しました。
2003/11/10/「即興集」ともども増刷中。
2003/12/28/第二刷ができ、通販開始。
2006/01/29/第1回まめまつりにて完売しました。
2006/7/22/挿絵もついて、袋綴じで、マメ上装第二版になりました。マメBOOKSにて初売り。7冊売れました。ありがとうございました。
2006/08/22/お待たせしました。通販を開始します。
2006/12/01/委託情報:渋谷『月箱』のレジ前、昭和アンティークの天開きガラスケースの中に納品しました。
2006/12/01/委託情報:中野『タコシェ』に本箱ごと納品しました。
2007/02/10/委託情報:『茶房高円寺書林』店内中央のアンティーク標本ケースに納品しました。
2007/03/09『銀花』効果で完売しました。どうもありがとうございます。


『はしきれ』豆版に寄せられたご感想の一部です

minibook そえさんよりminibook
「はしきれ」は袋とじなので、ペーパーナイフで切り開いていかないと読めないという作りになっております。
はしきれははしからあけていってます。
ゆっくり切らせていただきます。

minibook ニワくんさんよりminibook
私はまだ開けてません・・・ていうか無理そうです。(笑
だって上手く開けられなかったときの衝撃が・・・
今のところ一生懸命覗いて読んでます。


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