自分の中をゼロにしたくて、作っている。なのに作り終わるたび、100になってる。創作の不思議。
Exhibition in January, 2016
「小さな本の家で3 航海記」
会期:2016年1月18日〜24日
会場:自宅アトリエ 入場に際して2000円
http://kototsubo.com/
終日在廊。活版印刷の新作を予定。
赤井都出品作
『航海記』豆本と、豆本サイズオーバーのアートブック、豆本原画ほか
ついに活版印刷を始めた。今日は3ページ刷った。
Finally I started printing. It takes 4 years for planning. After the Tunami, I couldn’t continue, but now the first 3 pages were printed on paper, the story about journey on the sea.
計画4年で今日から印刷を始めた『航海記』。もし失敗したらまた紙を切るところからやればいいや、と案外気負っていない。私の活版印刷は、下手。明治期の活版印刷が日本に来た頃を思わせる刷りだそうだ。今のプロにはもはやできない味の刷りなんだって。
圧は真ん中の一番上が一番よくかかるので、そのあたりに活字を配置して、文字は縦で刷ってみることにした。文章は10年以上前に書いたものだから、青春の総決算な一冊になりそう。
字が読めればいいや程度の刷りでいいと、自分の中でハードルを下げているけれど、それでもむらとりが、大変。予想されたとおり、1ページずつ刷るのでせいいっぱい。どうしても「、」が出なかった箇所がある。まあいっかでいいことにするか、後で「、」だけ刷り重ねるか、どうしよう。今度からこういう時は活字一本ずつ高さ上げていこう。3ページは、3台。進行はゆっくり。明日になってインキが紙に沈んだら、裏移りがどうなるか、わかる。明日も続きを印刷する。
和文鉛活字を、和紙に両面印刷して、豆本を作る。
Today, I print 7 pages, Japanese metal letters. I am living in a small house. My letterpress machine is set in the entrance. No one can enter when I print. I teach myself. The machine is old one, before W.W.2.
今日は青と金で、最初はグラデーションで、後の方のページは色を混ぜて緑にして刷った。0.1mmでも活字が傾いていたらその一本の字は印刷に出ない。下ろしては、ねじをあけて、また締め直すことを繰り返した。微妙な活字の傾きを、指の感覚でまっすぐに揃える感覚がちょっとわかった。でも刷りむらはある。それは裏移りしないようにインキを少なく「絞った」からでもある。活字を潰したくないので圧をかけたくないけれど、圧をある程度かけないと、字が全部出ない。
両面印刷の位置合わせは、自分にだけわかる「見当」の世界で、説明できない。
組んだ時に足りなかった活字は、他の活字を裏向けにして詰めてあるので、それを使う字に差し替えながら、ゆっくり刷った。
活字の刷りむらは、おもしろいので、樹脂版はとても楽だけれど、これからも鉛活字で作品を刷りたいと思った。
こんなにして作っている自分の作品の値打ちは、でも、わからない。アクセサリーや鞄など身を飾るものに皆お金を使って、本にはお金を使わないから、売れないと思う。家で傍に置く物としては、お酒を飲む器にお金をかけるけれど、本にはかけないだろう。あまり部数が少ないと、歳月を超えるとすぐ消えてしまうだろうから、32で刷り始めた。30できたとして、きっと余ると思うけれど、今、作れる環境に作れる人がいることに私は、作る責任を感じるので、考えて手を止めてしまわないで、考えずに手を動かし続けよう。
自分にだけわかる感覚を、忘れてしまわないうちに、一気に刷ってしまいたいけれど、土曜は自宅教室、日曜は横浜のギャラリーでレセプションなので、この印刷の続きは月曜から。
Japanese metal press from page 11 to 16. These pages will be a miniature book, 航海記.
『航海記』が終わったら、しばらく鉛活字は触りたくない気分です正直。昨日は5ページ刷った。これ以上速度を上げるのは無理。写真は活字に悩まされた例です。刷ってみないとわからなかった誤植「氷」(水の間違い)、「。」の位置。そして典型的な失敗刷りで字が一部分印刷されない。これば微妙に活字が上に傾いていて下側が出ないんだと考えて、ねじを締め直して、なんとか。1月の個展までに、刷って製本します。明日もまだ刷るものがあって、奥付や扉ページが待っている。そして挿画。
オリジナルストーリーの文章は、10年前に書いたというのは記憶違いで、5年前に書いたものでした。
墨色で封筒と個展DMを刷りました。名刺交換していなかったりでもDMを郵送で受け取りたい方は住所をメッセージで下さい。メッセージいただいた住所は今回の郵送にのみ使用します。
Japanese hand letterpress for the book again. All pages are printed. Envelopes for the exhibition are printed, too.
The book title is: Voyage Record
It says: I am riding on a rowboat. I don’t know from when I am. I don’t know from where. I am surrounded by the sea, black waves. I am quietly rowing. (to be continued)
ここ5日ほど、口を開こうとすると左側が痛くって、変だなと思っていたけれど、活版印刷機のハンドルを左手で引いた時、あ、と思った。左の歯をくいしばっていたみたい。左でぎゅっとプレスする時、左の歯もぎゅ。気づいたので、歯をくいしばらないように、歌でもうたいながらプレスするようにしました。
薄い「か」があるけれど、それを出そうとすると近くの「で」の点点が出なくなる。「い」が全部強いのは「い」が新しい活字だったからなのかと最初思った。活字は使えば使うほどすりへって高さが低くなるので字が出にくくなったり太くなったりする。でも「い」は古いみたいなので、「い」の字形によってプレスが強くなるものなのか? 鉛活字やっぱりおもしろいので、終わってしまえばまた使いたくなった。
もう鉛活字で刷るものはないけれど、あとは挿画の凹版が待っている。小さいサイズのドライポイントをこの活版印刷機でプレスするつもり。
Exhibition in January
個展のご案内です。DMは東京堂書店に置かせてもらったのでもらって下さい。
ドライポイントをテキンで刷っています。挿画9枚、波ばっかりです。
Drypoint. Press by hand letterpress.
Waiting test paper dry up.
Why I make the book? I make 30 copies for 30 people. It is small amount, but I know some people will love it. It is expensive than paper back, so it will sell slowly. Not zero but 30.
自分でも驚くすごい集中力で9枚の凹版挿画を刷って、今、1ページを試験的に貼り合わせしたものを押し乾かし中。これでよければ、同じ方法で全ページに挿画を貼り込む作業をする。
全部印刷が終わって、思いがけず刷りが良かったのはとにかくシャルボネールのノワールの力であって、自分はアマチュアリズムのアーティストだと思った。
たいした中身になってしまったし、外装を「しずる化」するとなると、この本にはブックケースがいると思って、年内営業最後の今日、たとうにする紙を買ってきた。
郵便受けに、住所不明で返送されてきた個展案内状と、前回個展のことはよく覚えていてとても楽しかったけれど今回は都合がつかず行けないという遠方からの丁寧なお便りが入っていた。そして、もう一通、和紙と活版がいいですねというお便りもいただいた。
お店の包み紙で巻いてある大判の紙を、棚に置いて、机の上の重石を見つめて、思うこと。
今作りたい本を作って、著書本もあって、これって傍目には成功に見えるのかもしれないけれど、私は、どうしてこんなに一生懸命、少部数の小さい本を作るんだろうと自分をいぶかしんでいる。
手製本を作る人は増えたけれど、それは製本であって、出版をしていない。豆本が珍しくなくなったといっても、広くなったパイの中でも本の外見以上に内容がニッチすぎる本に感性が合う人はやっぱり限られていて、私のような人は誰もいない。
本を静かな場所で畳に座って読めるようにと、始めた小さな本の家個展。
冷静に、個展に来る人はたぶん20人くらいかな。それとも10人。
本をすごく気に入ってすぐ買う人はたぶん2人で、気に入って買えない人は18人かな。つまり来た人全員が気に入るという計算。
この本を知らなくて、好きなのに買えない人は20人くらいいるかな?
日本にいなくてこの本を好きな人は5人くらいで、同時代に生まれてなくて好きな人は、5人くらいかな?
ゼロではない。
マスと比較する意味は全くない。
それでも、こんなふうに本をこれからもう自分は作れないかもしれないな?
人に来て欲しいし、本を求められたい。でも自分で好きに作った本だから、もし10人に見に来てもらえたら、それだけでもう、充分な。
人気あるんだよ、というよく聞く褒め言葉は私にはもう当てはまらないだろうな。好きな人はすごく好きだけど、興味を示さない人や必要としない人には変わった小さい本、だと思う。それでもきれいだと思ってもらえそうだから、充分。
あの本のことをまた思い出した。とある小説の一節に、こんなことが書いてあった。若いピアニストに、あるおばばが言う「借金取りがドアを叩いていても、あたしはこの曲(?たぶんブラームスとか具体名が入っていた)を聴いていれば心が保たれる(?自由だ、だったかも)。あんたにこんな曲が弾けるか? これが芸術だ(?これが芸術の力だ)」
生きている間、毎日毎時、鎌を持った死神がドアをノックしているようなもの。それでも本を読んでいればドアのこちら側であっても、自由に、どこにでもいられる。私はその自由を、手の中の紙の物理的な手触りとして、偏愛しているのかもしれないな。
なんでもいいや。乾いたら続きを作ろう。
If I didn’t know miniature book, it would be calm winter holiday.
世の中に絶えて豆本のなかりせば初春の心はのどけからまし 字余り
作業
1月1日 貼り込み2種
1月2日 貼り込み2種
1月3日 貼り込み3種 見返し紙プリント 特装版綴じ糸染め
1月4日 現在乾燥待ち これから表紙ボール裁断に着手?
個展カウントダウン 航海記 たくさんのトライアル
I do not have much time left. Many trials. Make it 3D.
ブックケースは、オリジナルのデザイン。自分で考えてこの形にたどりついたけれど、合理的な形は先人も思いついているだろうから、もしかして和本のたとうで、これと同じ形があったとしたら、そう教えて下さい。
Making original book case for the normal edition and special edition (over 3 inches). I feel free to make. The exhibition has started.
たとうと、特装版(豆本サイズ外)ラストスパート。豆本を離れたのは思い切って。「しずる」加工を施すのは楽しかった。ボール紙を切って腕が筋肉痛になった。間に合ってよかった。でも初日誰も来なかった。休まってよかった。そんなもんでいいのか。
解版
そのまま取っておいてもいいよ〜とは言われたけれど、解版までやって鉛活字をわかりたいと思って、解版した。
『航海記』印刷にサヨナラを指で言う気分。3版とタイトル部分だけディスプレイ用に取っておいた。
この活字は他の何かを刷るために使われるだろう。まだまだ使える。解版に2日かかった。
活字棚の前に立っていたら、そこに一つずつ戻していくわけだけれど、私の環境では
1 コメモノと活字を分けた
2 活字を漢字とひらがなに分けた
3 ひらがなを机の上で文字ごとに分けた
4 箱に詰めると、小さくなってびっくり。活字協力の三木さんへ返した
解版した活字で、次の本の文字を拾ってみた。こんなに字があるのに、足りない字があったのでまた借りてきた。
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