For You 特装版 Making



2010/10/26/

新作づくりのはしばし

 今後、作品用のでんぷん糊は、電子レンジで作ることにしました。前回は水分が飛びすぎてカチカチになってしまったので、今回はラップして30秒チンしてはかきまぜてまた30秒レンジにかけました。透明感が出てからもしつこく繰り返して練ったら、すごい接着力が出ました。

豆本制作中

 ヤマト糊でもいいんじゃない?と言われながらも、紙舗直の保存修復用糊(輸出クオリティ)に移行したのは、主にコストの問題。ヤマト糊ってけっこうすぐなくなって高くつくんです。しかも重たい買い物。こっちは500g525円で、水で6倍くらいに増えます! 豆本なら一回買ったら数年使えるでしょう。ヤマト以外の出来あいの糊は、チューブじゃないとなるといきなり一斗缶になるので置く場所がないです。電子レンジ糊を作る前に、ふつうに鍋で煮て、透明になる感覚・粘りが出る感覚などを掴んでからレンジで作るのをお勧めします。最初からレンジだと、どれだけ火が通ったかわからないんじゃないかと思います。あとメーカーによってやはり接着力や糊の見た目が違う。世界堂で100円の使い切り小袋を何度か買いましたが、5袋買ったら500円になったのですよ。紙舗直(しほ・なお)の糊は好いです! 滑らかで、切れずによく伸びて、でんぷん離れした強度が出ます。というよりこれが本来のでんぷん糊の底力?
 それで、「紙殻」改良版を作ったのですが。

豆本制作中

 前回の「紙殻」は、アクリル絵の具の粉っぽさや不透明感が気になって、より薄い雁皮紙の、もとから淡い色づけされているのを使って、もっと蝶の羽っぽくすればいいんじゃ? と思ってせっせと作った。イメージに近いものができたので、糊のあるうちに、どんどん作った。

豆本制作中

豆本制作中

 ところが、組み合わせてみると、強度も色も弱すぎて、全ボツに決定。あと、形が、たぶん球でないと人の目にきれいに見えないと思う。今度は、ワックスペーパーではなくて、がちゃぽんカプセルを型にすればいいんじゃない? と思いつく。
 とりあえず、手染めの複雑味が必要だと思って、雁皮紙を絵の具で染めるところに戻って、できるだけ細かい模様で染め直しを始めました。予約は既に2件入っている本ですが、2カ月くらいかかります、と余裕をもって言っておいてよかったです。お問い合わせは言壺コンタクトフォームからどうぞ。

豆本制作中

 奥付は、本に入っているのは年号と発行しか入っていないので、英文でもう少し詳しい記述を刷りました。これを函の蓋裏に貼ったりする予定。インクは、シアンとイエローを混ぜて「草色」めざしました。

豆本制作中

 このエディションは、22作ろうと思っていてそのぶんの素材は確認してあったけれど、あんまりがんばらないことにして、12だけ作ることにしました。函なしの本だけっていうのも、考えることが多くなりすぎるので出さないつもりです。でも、12部だけのための奥付を、ここまで鉛活字で刷るかー?っと思いながらも、刷っていました。気長に地道に日々進みます。新作を作るのってやっぱりわくわくする。

豆本制作中



2010/11/10
まだペーパーマッシュ


シブヤ大学のワークショップへは、数日の告知でびっくりする数のお申込みがありました。抽選になります。

新作制作中
豆本制作中

 前回、きれいな球でないと人間の目にはきれいに見えないんじゃないかと思って、型を、自分でランダム感メインで組みたてたワックスペーパーから、がちゃぽんカーブへ変更。雁皮紙も、より薄いほうへ変更。アクリル絵の具も、粉っぽさが気になるので薄づきの染め方に、透明色に変更。でも、なんだか「僕の地球を救って」みたいな物体になるので、う〜んと思っていたところに、羽田野さんの啓祐堂での個展へ行って、そこにあった一冊の本の見返しを見て、何日か過ぎたころ「あ!」とその技法と今目の前にある状況が結びつき…

豆本制作中

 お線香を使う作業がけむい。

豆本制作中

 思った以上に、よい物に。ギラッとした鏡面の反射が、雁皮紙によって間接光になって、雁皮紙がまるで宝石みたい。これなら、この外函を鉄にするという案にも素直に結びつきそう。しかし、あまりにも複雑味が今度はありすぎて本がかすむので、染め紙を数枚と無地を混ぜて、いろいろ作ってみた結果、「湖」「空」へのイメージで青と白にしていたけれど、もはや青じゃないんじゃないかという気がしてきて…

豆本制作中

 アンティークピンクと、黄、緑、などの組み合わせで、そしてやはり2つがペアの形で! 薄いのを重ねようと、今度の試作が乾くのを待っています。

豆本制作中

 「製本」以外のところでやたらと時間がかかっています。オリジナルのクッション機能を求めたために…。しかも、革函も作り直します。指輪立てを入れるというアイデアを高円寺で拾い、既製品の指輪立てが5mm高いので、函を合わせることに。それで早く鉄屋さんにサンプル渡さないと鉄函作ってもらわないと。でも指輪立てのおかげで、ハート型の本が革函の中で立つようになって、やりたいイメージに近くなってきてよかった。時間をかけるわりに、数十万円のルリユール作品のような値段にはなりません。そういうところが「赤井さん、豆本よくやるよ」と啓裕堂でF先生に言われたその「よく」の部分なのかな?

2010/11/16
落ち葉の駆け足が聞こえて


11/27 箔押しワークショップ 13〜15時開催 参加者受付中 詳細・お申込みは言壺

 不肖私も審査員を勤めた顔フォトコンテストのスライドショーライブが先週末に行われました。審査結果はもう送ってあるので、そろそろ発表かな〜と、私も楽しみに待っているのです。すごくおもしろい写真がたくさんエントリーしていたので、審査評も割れて1票ずつしか入ってないんじゃ? とか思われるような、「皆一番」的、個性みちみちなコンテストになってます。

 新作『For You』は、とにかく完成品一式を送って、鉄函をオーダーするところにもっていき、ほっとして、今日は指輪を作りました。

豆本制作中



2010/12/10
刷り増し、刷り足し


活版印刷豆本制作中

『Asterisk』増し刷り。金インクは難しいと常々師匠が言っています。今日はリベンジでちょこっと刷りました。ローラーを洗うのがやっぱり大変だ。でもいいのが刷れた! (左)和紙に金は、繊維の間にインクが抜けて、はかないいかんじ。 (右)更紙に金は、もうちょっとしっかりしているけど、やっぱりはかないかんじ。
ここまでの墨・グレー・金インクの『Asterisk』、一冊100円で豆本がちゃぽんと通販に入ります。
明日は活版工房喫茶室! がちゃぽん出張版出ています。カレーは4種のあいがけになるそうで、ということは、ごはんはダイヤモンド型でないと4種類載らないよね。明日明らかになることでしょう。

活版印刷豆本制作中

『For You』特装版に、鉄函のクレジットが必要になったので、2行刷り足しました。『For You』奥付のフォントはBodoni Book 8ptで、インクは青で刷りました。

活版印刷豆本制作中

(右)鉄函の試作。 (左)この試作を踏まえた、オーダー。紙の型紙。

活版印刷豆本制作中

革函は本同様、私が作っています。左はこれまでの函で試作品、右は今度から本番で作るサイズの函。ほんの数ミリの違いですが、このあたりのサイズでの数ミリは大きいです。きゅっとコンパクトな縦長シルエットになります。制作がんばります。



2010/12/22
いずれトリュフか薄荷水


 薄い一冊の豆本は、一服の清涼剤のようにもなるでしょう。『雲捕獲記録』通常版の薄冊は、薄荷水だったかもしれません。
 『寒中見舞』通常版は、薄荷水のようでありながら、だんだんあったかくなるので、薄荷水のhot? 焼きアイスクリーム? それとも冷たさ極まって舌に熱い氷? 甘さがあるひんやり感なので、単に氷砂糖でもあったのかも。
 そして今作っている、『For You』特装版は、はっきり、これはトリュフです。こんなにあちこちコテコテして、細かく作りこんで、いろんな素材を何層にも重ねて、ビーズのトッピングも添えられて、しかも一つ一つ吟味されまくってるし、こんなに小さくて凝ってしまって一つの作品として大丈夫かな、と思った時、トリュフが頭に浮かびました。トリュフも、芯まで三層構造くらい当たり前に平気だし、その上にさらに飾りも載るし、それでいてまとまった一口の食べ物として成り立っているし、うん大丈夫だ。今度の本はトリュフだ。一口にじわじわ味わって下さい。


2011/01/14
For You 特装版、フィニッシュに向かって


もうすぐ、鉄函が届くはず。雪で遅れているのかな。10月から、ようやくここまで来た。嬉しくてたまらない。トリュフみたいに、小さくてコテコテなこの本は、作る際にも新規な小技の連続でした。エッチング、ペーパーマッシュ、丸い革函、ハート型の本、いろんな技法にチャレンジした本になっています。この小ささだから、いいんだよね。

豆本制作中

表紙は、台紙にはりつけてから箔押しして、くるんで。本と表紙は一つずつ番号をつけてあって、現物合わせで精度が出ます。(別の本と別の表紙だと、合わない。)手切りのハートです。本は厚みがあるので、中身をまず切ってから、それに合わせて見返し(この紙が硬い)を切るという二段階で化粧裁ちして、一緒に糸で綴じてあります。

豆本制作中

革の厚みが表に響くので、見返しの内側を「埋め立て」してあります。(厚みゼロに向かって縁を革すきするのは、この大きさでは、手が危なすぎるし。)

豆本制作中

函づくりは、以前の記事(foryouのカテゴリーで、この記事の2こ前くらい)で紹介した洋書を参考にしていますが、手法にはいろいろアレンジを加えています。函の底と蓋にあたる円形部分は、切っても紙目がわからなくならないよう、一つずつ紙目の矢印を書いてから切るという小技でやっています。(『そのまま豆本』のビスケット豆本にも紙の目の矢印がさりげなく書いてあるんですよ。「紙の目」という言葉は、あの本の分量の中では説明しきらないので、単に「印を合わせて貼りましょう」的な表現ですが、そういう意味です。)

豆本制作中

蓋の内側になる部分にも、奥付を入れました。台紙と、奥付の紙を貼り合わせて、押し乾かし完了。

豆本制作中




2011/02/04
For You特装版の革函とph


豆本制作中

クリスマスにはぜんぜん間に合わなかったけれど、バレンタインには、今のペースをもうしばらく続けられれば間に合うと思う。鉄函は、届いています! すごくかっこいいです。鉄函の出来上がりサイズから、ちゃんとその中に入ることを確認して、革函を作っています。芯紙は地券紙で、和紙をテープ状に切ったものにボンドを塗って巻いて、現物合わせで余分を切って、やわらかいとろんとした革をその外に貼っていっています。和紙は、函や本の内側にも入るし、途中段階をやさしく包んだりにも便利。

豆本制作中

特装版に、地券紙のような「再生紙で、酸性ばりばりの紙」と言われてる紙を使うのはどうかと思い、でもこの柔らかさでないと今回うまく整形できないし、今回は一代確実に持てばいいから、と地券紙を選んだのですが、酸性紙が気になっていました。精製水を買ってきたので、前から入手してあったPH試験紙を使って、紙の酸性の度合いを測ってみました。

豆本素材の酸性度を測る

もっと赤くなるかと思いきや、え、そんなに酸性ばりばりじゃなかったですよ。イメージとは違って。測り間違えたのかと思い、そのへんの和紙も測ってみました。

豆本素材の酸性度を測る

保存修復クラスで取ったノートは断片的なよれよれのメモ書きなので、下を読んで測り方を再確認しました。自分の測り方、合ってると思うんだけどな。思いのほか、いい結果が出たんだよね。 … 
紙媒体資料の pH の測り方 メルク社のpH ストリップを使って 木部徹 2003/07/23初出、2005/06/24改訂

精製水がなんだか怪しい気がしたので、精製水だけで測ってみたら、精製水が4.5ぐらいでした。自分がふだん使っている浄水のほうが6ふりきってました。浄水で測り直したら、より中性に近づいて、「これは、水を測っているのか素材の表面phを測っているのか」謎になってきたので、水の量をぎりぎり減らしたりして何度もやっていましたが、やはり和紙と同等のph5〜6という結果になったんですよね。(ph6以上を測るストリップは持っていません。酸性度合いしか見ないと思って買わなかった。)【★2/16追記1:精製水はイオン交換法で作られているので、pHがない。精製水のpHは測れない。測定器で測ろうとすると、針が揺れ動いて定まらない状態になるそうです。(北極点で磁石を持っているのを想像。)この精製水で測ってこそ、紙のpHが測れることになるということです。他の水だと、その水のpHを引き算してやらないといけなくなる。「修理と保存」クラスで聞いてきました。】

豆本素材の酸性度を測る

試験紙で表面phを測るのはどっちみち誤差のある方法だから、まあざっくり、ph5よりは大きい値ということは言えますよね。あとは、やはり中性領域が見られるもう一種類のストリップを買ってきて比べるしか。あとは、そう、この状態で安定して何年持つのか。【★2/16追記2:この方法で測れるのは、あくまでも今この時の表面pH。酸性紙は、年々硫酸を出して酸性に傾いていく仕組みが紙の中にあるが、和紙の中にはそうした仕組みはない。和紙のほうが繊維が長く、洋紙の紙の繊維はそれよりずっと短いのでもろい。つまり、結論としては、精製水で測った値のほうが正解で、地券紙も和紙も今の表面pHは5くらいの弱酸性。ただし、それが即、紙の同じような長持ちを意味しない。】


2011/02/15
ついに完成『For You』特装版


『For You』特装版がついに完成しました。10月からずっとやっていましたからねえ。ほっとしています。「豆本カーニバル」でお見せした時から革函の縦横比と色を変更し、鉄函をつけて完成しました。古書会館のイベントでお見せしたのはトライアル版ということになりました。完成した正規エディションの2つは既に送りました。あと3つは行き先が決まっています。限定12部なので、あと7部を販売します。言壺HPにもうすぐ作品ページを作ります。詳細はそちらでご覧ください。

著者、組版、印刷、エッチング挿画:赤井都
鉄函制作:河原崎貴
2010 言壺
鉄函 H65×W66×D48mm, 221g
革函 H56×W56×D38mm, 14g
本 H40×W40×D3mm, 28pp., 2g
  鉄函・革函入、革装ハート型本、表紙と革函に金・黒・銀の箔押し、赤井都による活版印刷本文(紫・緑・墨)、手彩色エッチング2葉入、一折糸綴じ 染め雁皮紙を用いた半球2つ入り、ビーズ指輪とアクリル製指輪立て付 函蓋裏に限定番号入り、本に限定番号と著者署名入り 限定12部 18,000円

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