2015年11月19日

稲垣足穂のブックデザイン

稲垣足穂のブックデザイン
稲垣さんとお電話でお話した後は、自然に「さん」をつけたくなってしまうのだけれど、稲垣足穂(さん)の豆本を作るにあたり、図書館で借りてきた参考本です。これまでにどんなブックデザインで出ているのか、本人が計画した初版のデザインはどんなだったか、というあたりがまずは知りたいところです。
稲垣足穂のブックデザイン
『一千一秒物語』の金星社による初版は、関東大震災の年に発行されました。その復刻版です。ビラのようなデザインの表紙。
稲垣足穂のブックデザイン
扉口絵。これも日本の本ですね。一般に日本の本は、扉の前の口絵が、扉と向い合せではなく、めくったこちら向きについている。これは、扉と差向いにある、本の内容を一枚で代表するような挿画「フロンティスピス」としての作りではなくて、むしろ仮綴じ本を綴じた時に仮の表紙が差し込まれているのを模しているのだろう、と。別の紙でこの口絵が作られていて、タイトルも入っているのがその証拠と考えられるかな。
稲垣足穂のブックデザイン
扉、文字組きれいです。
稲垣足穂のブックデザイン
これは珍しい。本の中に、帯でするみたいなアオリが入っている。綴じ込まれていると、紛失しなくていつまでも大丈夫だけれど、その後の文学活動でもし万一推薦者と袖を分かつことになっても、これ取れないから困るな、なんて余計な心配。
稲垣足穂のブックデザイン
このページは、『一千一秒物語』を調べていると、よく見る記述のとおりです。私のイメージでは、扉の対向面にあるかと思いきや、佐藤春夫のページがあるせいで、その裏になり、かなり本の中の方に入っているんだな。
稲垣足穂のブックデザイン
本文文字組。きれいです。
稲垣足穂のブックデザイン
こちらも、復刻だけれど、新しい装丁。
稲垣足穂のブックデザイン
なるほど。
稲垣足穂のブックデザイン
つるっとしたアート紙に、ココア色の文字で印刷されています。文字組は金星社初版と同じです。
稲垣足穂のブックデザイン
工作舎発行です。これは画像で見たことがありますが、本物が図書館にあって嬉しい。有名な杉浦康平他2名のデザインです。
稲垣足穂のブックデザイン
見返しからの枚数が多いです。
稲垣足穂のブックデザイン
この手の本は、奥付を先に見てしまうな。
稲垣足穂のブックデザイン
この文字組や穴あけ加工は、作業する側にとっては悪夢だったでしょう。内容が硬いので、これくらいグラフィックを入れて、飽きさせずに読ませることを考えたのかな。いやーどれもきれい。
他にも、たむらしげるの絵本などを借りました。先行するブックデザインにどんなものがあるかは、自分の豆本を作るうえでも参考になりました。私が作った稲垣足穂の豆本は、ただいま世田谷で展示中です。通販もしてます。豆本のお届けは今月末頃を予定しています。
そして、23日の文学フリマに、超短編ブースに出ます! タカスギさんのところに、小さく置いてもらいます。私も会場に一日いてぷらぷらする予定です。

2015年11月4日

作品一覧ページを更新しました

壜入り活版豆本
作品一覧ページに、稲垣足穂『一千一秒物語』抄 『どうして酔よりさめたか?』と、超短編集『月夜のまひる』を掲載しました。『どうして酔よりさめたか?』はお届けまで一か月くらいかかります。
ミニチュアブック

昭和豆本が壊れて修理しました

本の修理
 私個人が所蔵している本を、自分で修理しました。手のひらサイズのハードカバー豆本『洋酒マメ天国』(サントリー発行)です。
本の修理
 修理前の本の状況です。綴じが外れて、ページが取れてしまいました。糊は経年変化で劣化しています。この本が壊れた原因は、糊で直接本の背につけてある構造だから・なおかつ紙が逆目で使用されているから・なおかつその紙が厚いから、です。豆本に使用されている紙が本の大きさに対して厚手なので、通常サイズの本で考えれば倍くらいの厚みで逆目で背に糊付けされていると想像すると、閉じ開きのたびに紙に負担がかかって、「そりゃー壊れるわー」ということになります。
本の修理
 本を開くたびに、ぱらぱらとページが取れそうなので、そっとしていたのですが、このままでは読めないので、修理することにしました。本がバラバラになると、取れたページの散逸の恐れもあります。
本の修理
 ついに後ろのほうまで、外れてきました。「綴じられていて読める」という本の機能が失われているので、そっとしておくんじゃなくて修理の必要があります。本のデザイン、内容、活版二色刷印刷のクオリティに対して、製本のクオリティが低かったと言わざるを得ない結果が出ています。といっても、洋酒マメ天国全冊が、こんなふうにページが外れて崩壊するということはないようで、他の方の所蔵本を見せてもらったら、本は穴背に仕上がっていて構造に問題がなく、ページが取れそうな気配は見られませんでした。私の本が「はずれ」だったみたいです。
本の修理
 私のは、見返しののども、1センチくらい紙がたりていない個体です。
本の修理
 扉のノリも、奥まで入り過ぎて開きが悪い物でした。これはもしかして正規のエディションではなく試作程度の物が流通してしまったのかも、など当時のことを想像するしかありません。でもこの本は、当時のチラシを見ると、必ずしも酒屋さんの「おまけ」ではなく、バーなどで販売されたり、定期購読も受け付ける有料の本として案内がされています。当時の女優さんが宣伝文を寄せているチラシを見ました。
本の修理
 私のはなにしろ、表紙も、機械か何かでうっかり挟んでしまったような跡がついているので。他の個体を見るまでこれがデザインだと思っていました。なおジャケットのグラシンは古本屋さんがかけたものなので、本の保存に適したニュートラルグラシンに架け替えました。
本の修理
綴じを直すので、いったん全部のページを外しました。表紙側に見返しだけ残して中身を取り出しました。
本の修理
 ページをバラバラにして、古い糊を外しました。
本の修理
 紙の本体を傷めないよう、カッターの刃と逆側でカリッカリッと気長に物理的に除去しました。古い糊が残っていると新しい糊が入らないので、根気よく取りました。
本の修理
 ボール紙を両側に当てがって、プレスに背を上向きに挟み、直角をちゃんと揃えてから、ピラニアンノコで目引きしました。
本の修理
 ぎざぎざに引いたミゾの中へボンドを塗って、これが新しい糊綴じになります。
本の修理
 もしもこれまでと同じ形で、ハードカバーの内側にこれを直接糊づけして戻したら、またいつか同じように壊れるでしょう。私がしているのは修復ではなく、修理なので、本の構造を変えて、本を利用できるようにして直しました。クータをつけて、穴背の構造に変えて、中身を表紙の中へ戻しました。見返しの長さがのどで1センチたりないのは、似た色の和紙でつぎたしました。「開きが悪ければ修理した意味がない」。ちゃんと危なげなく開いて読める本になりました。この本の下にあるのは、同じクラスで修理されていて、同じ日に修理が終わった本です。
 本の修理と保存のレッスンに、5年間通いました。二週間に一度、二時間のレッスンで、自分の中での達成率は7~8割かなというかんじで、あとの2~3割を埋めるには5~10年くらいかかりそうに感じたので、本の修理はここまでにすることにしました。10月から、デコール(金箔押し装飾など)のレッスンに通い始めました。デコールは華やかそうに感じたのですが、いまのところ、やっていることは、本の修理よりもむしろ地味なほど地味に思われます。