*2007年ミニチュアブック協会コンペティション特別優秀賞受賞作品
文:赤井都 印刷、奥付レイアウト、題字デザイン:海岸印刷 ニット制作:濱田映子(ににむぎ)/和紙に活版印刷したふわふわ豆本/三椏和紙表紙上製本、英文抄訳付、検印紙貼込み、限定番号入り、二折糸綴じ/楮入和紙に活字組版・手動活版印刷(墨〜銀の混色6色を使用)、36頁/特装版A:H75×W64×D35mmのかぶせ函入27g、本H68×W50×D7mm (12g)、モヘアジャケット付丸背角丸 限定26部 5,800円/
B:H70×W53×D7mm (11g)、角背 限定100部 3,200円/言壺2007年4月発行(限定番号、著者検印入)
2007 Miniature Book Competition Distinguished Book Award Winner
text: Miyako Akai, printing: The Seacoast Press, knitting: E. Hamada
2007, Deluxe Edition: 26 copies Limited Edition: 100 copies
Letterpress printed with six colors on Japanese paper. Written in Japanese and English. Each page was torn by hand. The book has a hand-made knitted jacket and is housed in a Japanese paper box.
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◆特装版(限定26部・アルファベット入)
三椏和紙表紙・丸背上製・モヘアジャケット+和紙貼函+特製防虫布風呂敷包み 頒価5800円(税込、送料別途)
2007.11.20完売
特装版は、白い不織布で風呂敷包みになっています。天然の青森ひばの、ごくごくほのかな香り。ウサギの足跡ゴム版が散っています。
風呂敷をほどくと、中から和紙の貼函が現れます。函の大きさは、縦75mm、横64mm、深さ35mm。英文タイトルを活版印刷し、ちぎれ雲として貼りこみました。
函を開きます。函の中にはふわふわが縁までいっぱいに詰まっています。
中身を取り出します。丸い窓の向こうに、うっすらタイトルが透けています。これが本です。
見返しは、銀の友禅和紙。三色のウサギの足跡版画。
和紙の遊び紙二枚入。読んでいる間中、手のひらにふわふわが持続する読書体験となります。
限定版と、本文は同じ。ただしサイズが2mm小さく、マージンが小さいです。
モヘアジャケットは、かけはずしができます。ジャケットの中には、指にやわらかく当たるよう角を丸めた、丸背の本が入っています。特装には、角背上製にはない後ろ遊び紙(薄ピンクの極薄和紙)も2枚入っています。
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◆限定版(限定100部・あいうえお入)
三椏和紙表紙・角背上製 頒価3200円(税込、送料別途)
限定版上製本は、角背。表紙は純三椏の出雲水玉和紙。少し毛羽立ったような風合いで、手触りはつるつるしています。水玉模様の出方は、一冊ずつ異なります。雁皮紙に活版印刷したタイトルを貼りこんであります。表紙も本文も和紙なので、持つととても軽いです。
和紙の遊び紙2枚入り。
本文和紙。小口は一枚ずつ手でちぎって仕上げたので、ぬいぐるみのようにふわふわです。雲のようで触れると気持ちいいです。小口のふわふわに癒される、とよく言われます。手作りの花布もふわふわ。
タイトル文字、本文ともに活版印刷6色、日本語と英語の二ヶ国語。ページをめくるにつれ、文字は次第に銀色に変わっていき、ストーリーは幻想風味を強くします。甘く、かすかにせつない大人の童話。
ストーリーは… 子どもの頃、持っていたウサギのぬいぐるみ。それはいつしか捨てられてしまったけれど、何年もたってから、「私」は雲の中でウサギがはねているのを見つけます。「私」はウサギの雲を捕まえようとします。赤井都オリジナルの、雲とぬいぐるみのウサギに関する幻想的な超短編六話連作。am8-3(2009)に全文収録。
奥付には、著者検印、あいうえおによる番号入。見返しにうさぎの足跡の消しゴム版画(サイン入り)。
空色と青色の糸2本取りで中綴じしてあり、きれいに180度開きます。
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【店舗販売・手に取れる見本ありました】
言壺 赤井都 豆本展(ギャラリーショップノラや): 2冊あり 追加納品 (限定版見本あり)
茶房高円寺書林: ゆ、ゑ 追加納品 (限定版見本あり)
京都恵文社一乗寺店: 追加納品 よ、を(限定版見本あり)
【頒布済】
A, B, C, D, E, F, G, H, I, J, K, L, M, N, O, P, Q, R, S, T, U, V, W, X, Y, Z
あ、い、う、え、お、か、き、く、け、こ、さ、し、す、そ、せ、た、ち、つ、て、と、な、に、ぬ、ね、の、は、ひ、ふ、へ、ほ、ま、み、む、め、も、わ、ら、り、る、ろ、や、ゐ、れ、ん、ア、イ、ウ、エ、オ、カ、キ、ク、ケ、コ、サ、シ、ス、セ、ソ、タ、チ、ツ、テ、ト、ナ、ニ、ヌ、ネ、ノ、ハ、ヒ、フ、ヘ、ホ、マ、ミ、ム、メ、モ、ヤ、ヰ、ユ、ヱ、ヨ、ラ、リ、ル、レ、ロ、ワ、ヲ、ン
青山ブックセンター『ABC de タイポグラフィ!』展(6/11〜7/2)、キャロットタワー世田谷生活工房『箱の中の豆本たち』展(9/21-30)、空間舎『本と蔵書票の楽しみ』展(10/2-31)、『アンダーグラウンド・ブック・カフェ vol.10』(10/14-16)、第6回文学フリマ、ふくまめ(2008.3/20-23)でも頒布しました
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・本について
遊び紙は薄和紙です。引っ張ったりせず、やさしくお取り扱いください。
字組みも製本も手作り品なので、ページには若干の寸法のずれがあることがあります(だいたい2mm以内)。
・特製風呂敷について
風呂敷には、天然青森ひば油が含ませてあります。
防虫効果は約一年です。
その後も虫害にご注意の上、風通しのよい場所での保管をおすすめします。
・モヘアジャケットについて
特装本のジャケットはニット(手編み)製品です。
引っかかりやすいので、取り扱いにはご注意ください。
糸・・・ウール76%(うちキッドモヘア93%以上、ラムウール7%未満)、ナイロン24%
中綿・・・ウール100%
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本文: 汎紙苑楮入K-155
題箋: 土佐機械漉薄様雁皮紙
白遊び紙: 土佐雨音白
青遊び紙: 土佐楮顔料染薄口
特装後遊び紙: 土佐典具むら染
特装見返し: 友禅紙
上製見返し: 檀紙
表紙: 出雲三椏水玉紙
函: 土佐楮顔料染薄口、友禅紙、小川強制紙、土佐雨音白、土佐典具むら染
印刷者: 橋目侑季(海岸印刷)
印刷方法: 活字版印刷 Adana8×5
印刷回数: 本文=墨・銀の混色(6種)各一回 題箋=墨一回
使用活字: 本文、タイトル=明朝体 8pt、Universe Light 8pt
奥付=明朝体 6pt、Universe Light 6pt
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表紙も本文紙も和紙。プリンタには通らない繊細な和紙を、活版印刷で印字して、本にすることが可能になりました。
活版印刷は、個人宅で中古印刷機Adana Eight-Fiveを動かしているプライベート・プレス「海岸印刷」が行いました。活版印刷は、金属の活字を組んで刷る、一昔前は一般的に行われていた印刷方法です。Adana Eight-Fiveは、葉書サイズまで印刷可能な卓上タイプなため、あらかじめ本文用紙を2ページ見開きサイズにカットし、2ページずつ刷って製本しています。
海岸印刷と赤井との出会いは、前年11月の文学フリマ。出品されていたカードサイズの活版印刷歌集を見て、赤井が印刷を依頼。MBS受賞作『籠込鳥』の次作の計画がスタートし、活字を買いに行くところから本作りが始まりました。和紙は透明度がありすぎるため、裏移りしない(両面印刷可能な)、薄くてしなりのある和紙を求めて、二人で和紙店をはしごし、捜し歩きました。
この本では、ページをめくっていくにつれ、黒い文字が銀色に次第に変化していきます。赤井が書いた雲のウサギのストーリーの、現実的なシーンから幻想的なシーンへの移行を、インク色のグラデーションで表現。これは休憩中の喫茶店で出されたアイデアです。
また特装には、雲をイメージしたモヘアジャケットがかかっています。これは編み物のエキスパート濱田が、本に合わせて手編みしました。赤井との出会いは、渋谷のレンタルボックス「月箱」。出品されていたふわふわのマフラーを赤井が見て、これが本のジャケットになったらと想像。
ジャケットの厚みで小口が開かないよう・本を開いたときにジャケットが外れないよう・頬擦りしたくなるボリュームを出すなど、本好きの赤井からの要求を、編み物好きの濱田が叶えました。「いつまでも触っていたい」愛玩できる手触りと、「箱を開けるたびに増えてきそう」な、アーティスティックな見た目のインパクト。読書中、手のひらの中にふわふわが持続する不思議な読書体験となります。
このように、雲のウサギの柔らかなイメージを、製本、印刷、ジャケット編み、20〜30代の三人の女性が協力して形にしました。
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4/1 東京製本倶楽部の会報48号(2007年4月1日発行)に取り上げられました。
『注目株は、自作小説を豆本に仕立てている赤井都さん。昨年、国際ミニチュアブック協会主催の国際コンペで、豆本作品『籠込鳥』がグランプリを受賞したアーティストだ。今回のイベントに出品する新作『雲捕獲記録』は、本文が活版印刷で、2種類の上製本を作成、三椏和紙やモヘアのジャケットなど、内容にマッチした装いで楽しませてくれる模様。』
4/10 PJニュース記事に取り上げられました。
>>豆本作家の赤井都さん!新作を第2回「まめまつり」に出品=東京
『希少本の世界だが、この値段のものがマーケット現場で即売するというのは、相当の魅力をもたないと実現しにくいものなのである。』
4/22 田中栞日記の創作豆本『雲捕獲記録』
で、レビューされました。
しかしこの本には、造りの美しさ精巧さだけにとどまらず、読者がこの本に触れる行為自体にまで、大きな意味が含まれている。
というのも、この特装本は、読み終わって再び函に入れる時、蓋を閉めるにつれてモヘアで作られた雲が、函の隙間からほんの少しはみ出しながら中へと納まっていく、その様子が、あたかも雲を捕獲している行為のように感じられるからだ。
続けての『読者は、まさに書名のとおりの行為を行うことになる』という考察、『籠込鳥』の『助け出す』読書行為との対比が、深いです。どうもありがとうございます。
なお、上記記事中でご紹介いただいている『雲捕獲記録 Dancing on the Cloud』の制作企画のもようについては、Archivesの2007年-3月のあたりをご覧ください。「S」発送のもようはこちら。
8/25 お人形Mook Dolly*Dolly のスタイリングに使われました。
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> ・作品の実物は、ウェブサイトで見たものとイメージは同じでしたか?
yes→装丁や和紙の質感がイメージ通り(素敵)でした。
> ・作品の内容は、期待していたようなものでしたか?
yes→幻想的という言葉がぴったりの素敵な内容だと思います。
「雲捕獲記録」、想像以上に良かったです。
私も幼い頃にお気に入りのうさぎのぬいぐるみを持っていたので
懐かしいような少し切ないような不思議な感じがしました。
雲の上でウサギと踊る、最後の章がとても好きです。
目を閉じると優しく、幸せな情景が浮かんでくるような気がします。
この章を読んでやっと「Dancing on the Cloud」の意味が分かりました。
素敵な作品をありがとうございました。
だいたいは想像通り。実物は想像以上に心地の良い豆本でした。
しかも、実際に何度も目にしてそのうちの何回かは触りました。
売り切れると悲しいので、思い切って買ってよかったです。
本の作り自体からしてそうですが、こっそり一人で大事にしておこうと
いうような気持ちになる物語でした。
でも、豆本見るのが好きな友達には見せてしまいます。自慢します。
たぶん、数日から数ヶ月、「しつこく取り出しては眺める」のは確
実です。
それが落ち着くと、「時々取り出しては眺める」になると思います。
見返しをめくったところ。
薄い和紙に印字された文字を見ているだけで、知らず時間が過ぎて
しまいます。
本文までたどり着くのになんと時間のかかる本でしょう。(褒め言
葉ですよ)
こんな気合いの入った、凝りに凝った豆本を世に生み出してくれた
赤井さんには、深い感謝の心と、強烈な憧憬を。
今後、どんな活動をされるのか、目の当たりにしたい所存でござい
ます。
触り心地がふわっふわで、とても心地よいです。
箱も本も、細部にまで手が込んでいてびっくり、
想像以上に繊細できれいです。
淡々とした柔らかな文章が、お話によくあっていました。
優しくて、どこか切なくなるのが、とても素敵です。
和紙が光できらきらして、銀色に変わっていく文字がよく映えて、
本を包む手の感触が柔らかくて、すっぽりと収まって、
お話の中のウサギを手のひらに包み込んでいる気持ちになります。
読んだ後、不思議な懐かしさと切なさが、心に残りました。
お話、文章、装丁、そして豆本であるということ、
全部がそれぞれ意味があるのですね、すごいです。
手のひらで握りしめていると、ふわふわウサギが頭に浮かんで、
心が落ち着きます。本当に素敵な本です。大事にしますね。
(虫が大好きそうだから、食われないように気をつけます!)
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