Jan 13, 2017

古い洋本が壊れないように閲覧する方法

新年の初仕事は、本に優しくする贈り物です。大きな古い洋本に当てはまる話ですが、一般に、本を閲覧する際、本の表紙は180度開くことが可能です。ただし、本を動かしてみて、背表紙と本体の紙との間に隙間がなく、くっついている本の場合、本の表紙をぱかっと開いて手を離すと、本の厚みがあるために、この状態では表紙を180度以上開いたことになっています。下写真で、本の表紙が一直線ではなく、それ以上開いていますよね。本の厚み分、余分に開いています。すると見返しや表紙に負担がかかり、この部分が切れてきます。紙が重いほど、厚みがあるほど、利用が頻繁で愛読されるほど、症状は進み、紙にひびが入り、見返しが切れ、ついには、表紙が取れてしまいます。(20世紀以降の本は、この問題に対して進化して、だいたいは、本の背と本体の間に隙間を作るように設計して製本しているので、こうした危険はありません。)

これを回避するよう、本の展示に使うような、本を160度くらい開く閲覧台を設置する方法もありますが、おおがかりですね。
そこで、本に優しくする、簡易的な台を作りました。開いた表紙の下に、本の厚みに応じて、一枚なり二枚なり、高さ合わせになるものをかましてやれば、表紙は180度以上開かず、これまでとほぼ変わらない感覚で、本を閲覧することができます。これで安心です。見るたびに本が壊れていくのは嫌だし、かといって本を開かないでいるなら、何のために本を持っているのかわからないです。


この台は、スチレンボードを芯にしました。たとえば木の板のような重いものを芯にすると、万一取り落とした時に本を傷めることになりかねませんが、軽いものなら安心だし、取り回しもしやすいので利用されやすいはず。本の紙の重さ以上の力はかからないので、これくらいで芯の強度は十分だと考えました。


外側は、革で包みました。本の革表紙に触れるものなので、革かネルか布か、と考え、埃がつきにくく、使うのが楽しくなりそうな、革にしました。折り返し部分と、縁をすきました。「不思議の国のアリス」で革すきを鍛えられたので、私にとって革すきはもはや瞬間芸です。

裏は、包んだままの革の厚みが不ぞろいですが、そんなに厳密さが必要なものではないので、使う楽しさ重視で。
表には装飾箔押しを施しました。クラシックな古典柄のワンポイントを、フォイル箔で。あくまでも本の引き立て役として控えめに。箔があると、薄暗い書庫でも存在感を発揮するので、見つけやすいし、ちょっときれいだから使おうという気に利用者がなってくれるだろうと思います。この書斎の場合、美しくないと、見える場所に置いておかれないだろうし、訪れる人も手に取ってくれないだろうと。そうした意味で革と箔押しで、ちゃんと使ってもらって、本に優しくするように、と。この台はLe Petit Parisienにあります。皆さんの近くにもしこんな古い本があったら、何かを高さ合わせにかませて、本に優しくしてね。

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