Oct 23, 2024
『The Little Prince』を、印刷し、製本しました。
技術が上がってくると、自由が増えてくるので、何を作るかを決めるのはアーティストの姿勢として大事です。私は、去年は自分の言葉とイラストで活版印刷のアーティストブック豆本を作ったので、今回は、人類共有の知的財産ウィキコモンズから、名作文学を選びました。小さくて、コンパクトで、ずっと取っておきたい、そして何度も眺めたい美しい本です。

伝統の手製本そのままの手法では、一冊30万円(3000USD)の手間のかけ方をした本になってしまいますが、私はそれを目指したいとは思いませんでした。そうした本は、多くの場合、大事にしまいこまれた結果、かびてしまったり、ブランドバッグのように転売されたりして、本として読まれて愛される、という時間を人と共に過ごす本ではなくなってしまいます。
私は、読まれるために本を作っています。
伝統の技法をアレンジしたために、私の技術はいまだに開発中ですが、小さく作り、本の閉じ開きを安定させる研究は重ねています。
手作りで、たくさんの数は作れない限定品なので、プレゼントにも最適です。きっとこの本は知られていず、他の人のプレゼントとかぶるようなことは全くないでしょう。
中身がしっかりと入っているので、小さいけれど、重みがあり、内容は大きいけれど、とても小さく、手のひらに包み込まれます。その満足感を味わって下さい。

アーティストとしての選択は、簡単に作れるからとか、この素材が安いから、この技法が安いから、という方には行っていないことは明らかです。簡単に作れないけれど、花布(head band)を編むという技法を継承し、人の所持する本として在るために、花布を編んだ本を作りました。手触りが良く、しなりも良い、ややふっくらとした書籍用紙を選びました。もちろん一番安い紙ではなく、また伝統そのままのオックスフォードの辞書の紙でもありません。この本の文学的な内容にふさわしいと思う紙を選びました。安さと速さを求めたら、活版印刷は絶対に選択肢に入らない技法だと思います。本文はコストの面からレーザープリントしました。しかし、あえてタイトルは活字の文字を組み、グラデーションカラーで活版印刷しました。均一さを綺麗さとするなら、樹脂版やオフセットのほうが均一なので綺麗という結論になります。しかし私は活版印刷のゆらぎが人間の脳に優しい、自然と同じゆらぎを持つ言葉の写像なので、好きなのです。

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