Feb 01, 2012

ジョージとさんぼの修理・続き

これまでの経緯はこちら(下にスクロールして以前の記事が読めます) ようやく、長かった粘着テープ取りも収集がつき、いよいよ組み立て修理に入りました。組み立てに入る前に、脱落してなくなっていたページを、調達しました。
書籍の修理と保存・実技

『じてんしゃにのるひとまねこざる』には、外れ落ちてなくなったページが1枚ありました。そこで、できるだけ近い版で該当するページをコピーしました。市立図書館の児童書コーナーには、新しい版があります。それを見ると、本のサイズも大きくなって、文字は横書きで、細い丸文字のようなフォントで、画の発色も違い、画と文字の組み方も全然違っていて、もう全く別物の本でした。テキストと絵のソースは一緒には違いないが、物体として別物……という、不思議な感覚でした。ついでに原画の復刻本も見ましたが、原画に忠実だから子供が愛せたかもやっぱり別物で、絵と文字をどう配置するかという編集やブックデザインの部分が、いかに影響していたかと思いました。いろんな版を見てみましたが、私は昭和40年代の、私が生まれる前から家にあったこの時の岩波の編集によって、ジョージを好きになったので、この時の版に愛着があります。大人の目で見ても、この時の版組や紙質、判型なども含めたバランスに至るまで優れていると思います。この本がぼろぼろになってテープだらけになっても、うちの姉が、容易にこの本を捨てなかった理由に納得しました。テープだらけで、そのテープも変質して取れかけて、粘着だけが残って紙を痛め、本を開くたびにページがどんどんばらけてきそうな状態で、このままでは取っておいても読めない。個人の思い出として、再度閲覧可能な形に戻して大人がたまに読む、というのが今回の修理の目的です。私がしているのは文化財の修復ではないので、可逆性(後世にした修理を必要とあれば取り去って元の状態に戻せる)は求めずに行います。それよりも、危なくなく(ページのこれ以上の脱落などがなく)閲覧可能な形にすることが目的です。個人蔵書で、閲覧する人は限られているので、図書館蔵書ほどヘビーユースな物としてがっちり直す必要もないです。
さて、欠けているページを埋めるために私が利用したのは、国立国会図書館の複写サービスです。
書籍の修理と保存・実技
国立国会図書館の検索サービスOPACで検索すると、『ひとまねこざる』の昭和31年の版が、上野の子供図書館に保管されています。そしてこの版は複写不可となっています。しかし、デジタルでスキャンしたものが国立国会図書館のOPACから読み出せて、その場でページ指定して出力することができます。実は国会図書館に行かなくてもできたようでした。
出力したものは片面印刷なので、これをキンコーズに持って行って、上質紙に両面コピーして、本に入れる新しいページにしました。
書籍の修理と保存・実技
なくなっていた表見返し一枚は、出力もしましたが、色味が違ったので、自分の本の後ろ見返しをコピーして作りました。
さて、もう一冊、ページが脱落していたのが『ちびくろさんぼ』です。これは、ギャラリーみずのそらに年賀状展で行った時に、近い版をなんとカフェスペースの本棚に見つけまして、快くお貸しいただきました!
書籍の修理と保存・実技

書籍の修理と保存・実技
ぐるるる…が、なくなっているページです。
書籍の修理と保存・実技
古い版(私の本)の方が、みずのそら所蔵本よりも、マゼンタが強い印刷です。昔の本は角丸だったかのように見えますが、元は四角で摩耗しただけみたいです。本は丁寧に扱うようにと子供の時から何度となく聞きましたが、なんでこんなに本の角がないんでしょ。私の中では、丁寧に本を見ていて、末っ子だけがまだ文字を読めないけど本にかまいたがったという美しい記憶になっています。
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驚いたことに、昭和43年の私たちの本は折丁になっていて糸とじでしたが、昭和50年の借りた本は、のり綴じでした。しかも、「ニカワっぽい接着剤だね」とコージ先生。上の写真でも、新しい本は開きが悪くてページが立っています。子供の本でのり綴じか…。ニカワは耐久性がない(経年変化で劣化する)ので、この先しばらくしたら、ページがばらばら外れるかも。岩波はその後、糸綴じにまた戻ったのかな?
書籍の修理と保存・実技
うちの本は背中も崩壊していて、寒冷紗がむきだしです。
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綴じ糸もゆるゆるなので、古い糸はもう切ってしまってかがり直しになります。修理の和紙は、楮紙の目を、裂け目にまたがるように貼ります。つまり本の背に対して、紙の目を横に取って、テープ状に切り、薄いでんぷんのりで貼ります。
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新しいページも組み立てました。折丁の外側に行くほど、紙が痛んでいる傾向が見事にどの折丁もありました。外側の紙にはどれも、見返しの補強でやるみたいに、和紙をぐるっと巻きました。
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こんなかんじに、四枚一組の折丁になってます。下左の紙は新しい紙です。わざと古色をつけるようなことはしません。むしろどれが新しい素材でどれがオリジナルなのか明快なほうがよいという考えです。
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見返し紙も、折丁の一部で、表紙に貼りついています。この本の場合はちょうど背が取れていて、見返し紙も寒冷紗が入っていた所が取れた分、紙が浮いているので、あんまり難しいことは考えなくても、表紙と見返しがくっついた状態で、隙間を利用して和紙でつなぎ、これも一枚の紙として、折丁の一部にして綴じることができます。手品みたいです。
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四折目の最後の折丁の、このばらばら状態も、同じようにして和紙でつないで折丁にできます。これを、折丁という構造の理解なしに、外れた隣同士をテープでつないでいると、力加減でまた別の箇所が外れ、とテープ修理に際限がなくなり、のどが厚くなるだけで、本の開閉に必要な強度が得られないのでだめです。続きはまた、今度。修理にはまだまだかかります。
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