2012年3月13日

ちびくろさんぼの修理と保存箱

書籍の修理と保存・実技
こういう修理の工程が見られるのは、貴重だと言われます。自分の本だから見せられるんですよね。依頼されたお仕事だと公開できない場合が多そうですから。さて、ほぼ一年かかって、延々と数冊分のセロハンテープ・メンディングテープ・絶縁ビニールテープの粘着はがしをやった後に、ついに粘着部分を全て綺麗にすることができました。ちなみにブッカーで修理された本も同じような運命をたどるようなので、粘着テープを使った修理はやめましょう。本を修理するなら和紙とでんぷんのりで。今の時点で、修理に取り掛かる前に撮っておいた本の状態(下側の白黒プリント)と比較して、自分が粘着をはがすのと一緒に表紙の印刷もはがしてなかったことを確認してほっとしました。上右は、ギャラリーみずのそらで借りた綺麗な『ちびくろさんぼ』本の表紙のカラーコピーです。これで表紙の欠けを補完しようと考えています。
書籍の修理と保存・実技
裏表紙も、今の本の状態(上)と、修理前の写真(下)とを比較して安心しました。
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内側もたとえばbefore-afterはこんなかんじ。
書籍の修理と保存・実技
欠落していたページ部分は、こんなかんじ。みずのそら本のカラーコピーを入れて綴じつけました。
書籍の修理と保存・実技
さて、いよいよこれで綴じ部分はよいので、本にしていきます。寒冷紗の上にクータを貼ります。帳簿製本と同じ一重のクータを入れることにしました。袋に作らずに、紙を折っただけ。FB堅紙90kg(一重クータだからこの厚み)
書籍の修理と保存・実技
背部分には水ときボンドをつけず、両側のひらひら部をつけて、穴背に仕上げます。
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まだ表紙と中身との間に、隙間はあいています。次の工程では、素材は表紙の上にかぶせて貼るので、今、この隙間をくっつけてしまいます。ただし折り返しをしなくてはならないので、天地20mmくらいはまだつけません。
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表紙ボールとクロスは新しい素材です。表紙ボールはAFハードボード0.9mm、クロスはバクラムでちょうどの色味のがなかったので製本用裏打布。
書籍の修理と保存・実技
後で折り返しをしないといけないので、背ボールの斜線の部分にだけ水ときボンドをつけて、まずは背ボールをくっつけます。
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背ボールをつけたら、次はひらへののっかり分・みぞつけと、折り返しとを同時に。
書籍の修理と保存・実技
作業して、こうなりました。ふう~
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あとは、折り返し部分にスパチュラで水ときボンドを差し入れてくっつけました。このように、私のこの本の修理では、水ときボンドを背まわりに使い、新しい素材を本文や背に入れていますが、後日この修理をはがすような、文化財の研究に必要なような可逆性は求めていません。でんぷんのり90%くらいまででないと戻せないようですが、でんぷん9割だと、私がこの本を利用するための強度が保てないと考えます。閉じ開きしてまたすぐに壊れてしまったら今の修理の意味がないので、私の利用を優先します。どこまでがオリジナルで、どこが新しい素材なのか、は今回はわりとひとめでわかる状態になっていますし、記録も残します。この後の工程としては、表紙の補修をしますが、それはまた次回。

それから、年末大掃除からの続きです。家用に保存箱を買いました。いろいろ考えたすえ、私の保存の方針は
・保存の最大の目的は、私が利用をしやすくするため
・この家は湿度が多く、それが一番の本の大敵になっているので、これまでの本の置き場所は変えて、できるだけ高い所に上げる(落下には注意)。
・古書店からの梱包やクラフト紙の封筒は、酸性で本の保存によくないのでやめる。元グラシンも酸性なのでやめる。古書店が本にかけたビニールは紙が呼吸できないのでやめる。記録のために取っておく物は、直接本体に触れないように、別で保管する。
・豆本を一つずつ箱に入れてしまうと、本にたどりつくのが大変になるので、全体を大きな箱にまとめ入れする。本同志のこすれが気になる場合は和紙などで包む(ビニール袋に密閉すると紙が呼吸できないのでNG)
・箱は積み重ねられる強度のある、アルカリバッファのある紙がよい
実はこの保存の方針を立てる前に、かびちゃった函を無水エタノールで消毒したりしてました。
書籍の修理と保存・実技

保存箱は、資料保存器材にシェル箱をB段で作ってもらいました。AFエンベロープも同時に購入し、細かいものを入れています。
あとはIKEAのテーブルを組み立てればこの部屋の作業性がぐっとよくなるはず。
資料保存用の箱

資料保存用の箱

資料保存用の箱

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