2018年8月30日

アメリカのミニチュアブック大会に参加してきました

2018年8月10日(金)~13日(日)、ミニチュアブックソサエティの大会に参加してきました。ミニチュアブックソサエティは、豆本のすべての局面に関心を持ち、本の芸術のあらゆる側面を積極的に推進する国際NPOで、本拠地はアメリカです。毎年夏に三日間、アメリカを中心とした各都市でコンクレイブと呼ぶ豆本大会を開催し、メンバーミーティング、豆本コンテスト結果発表、豆本オークション、豆本販売などの他、地元の図書館など本の名所スポットを訪れます。第36回に当る今年は、東海岸ヴァージニア州、ワシントンD.C. の西の、シャーロッツビルで開催されました。シャーロッツビルには、University of Virginiaがあり、その中の図書館にコレクターCaroline Brandtが15000点の豆本を寄贈しただけでなく、Carolineは毎年さらに豆本を買っては寄贈し続けています。図書館の中にはThe Rare Book Schoolがあり、そことVirginia Center For The Bookの二箇所で製本が教えられています。市内には稀覯本も含めた本屋が何軒もあり、参加者いわくBookie Townです。また、第3代アメリカ大統領トマス・ジェファーソンの元邸宅モンティチェロが近郊にあり、読書家であったジェファーソンが考案した、本を一度に三冊読める書見台や、筆記するとペンにつながったもう一つのペンが同時に動いてコピーを取れる機械、そして本棚のすぐ近くにある寝台などを当時のままに見ることができます。本棚の中には豆本もあります。ジェファーソンは、「I can’t live without books.」という言葉(1815)と、首都ワシントンに6500冊以上の本を寄贈して図書館を作ったことで知られています。イギリスがワシントンの図書館を焼いてしまったので、ジェファーソンがその二倍の本を贈りました。
私は2006年、初めて作ったハードカバーの豆本がミニチュアブックコンペティションで日本人初受賞をした後に会員になり、以降毎年豆本をコンテストに送り続け、ニューズレターを受け取ってきました。受賞してすぐ、来年は行く、と思ったのですが、豆本人気で忙しくなってしまい、機会を逸し続けてきました。数年前フェイスブックを始めたところ、会員の方々とつながり、お互いの顔や今の関心事がわかって親しみが増しました。大会には毎年、その都市近郊に住んでいる会員が世話役となるのですが、その方が私の大ファンで個人的な招待状を下さり、私の仕事がちょうど一区切りついたところでもあって参加に踏み切りました。
大会は、主にホテルを会場として行われました。参加者はほとんど皆が同じホテルに滞在し、食事も共にする、いわば豆本合宿です。一日目の金曜は、午後からホテルの前にあるバス停から無料バスに乗って、ヴァージニア大学図書館へ。どっちに向って歩けばいいのかわからないけれど、豆本っぽい気配のする人たちの後ろをついていけばいいはず。受付をすませて記念品一式が入ったロゴ入りバッグを受け取り、Carolineコレクションの展示を学芸員さんの説明付きで見学。書庫では、豆本は10冊くらいずつ立てられる手のひらサイズの保存函に保管されていました。豆本は稀覯本の一部として捉えられています。
豆本
豆本
展示室の隣では本の中身のアイデアを出すワークショップがあり、メモ帳に思いついたことを書き出しました。午後3時からは隣の建物内のThe Rare Book Schoolで、ワインとチーズ、ぶどうなどが並べられ、学校紹介がありました。本を、Virginia humanitiesと位置づけているのが印象的でした。ホテルに戻ると、サロンに本が並べられていて、豆本古書店主の会員さんがマイクを取って、入札式のサイレント・オークションが行われました。同じ部屋でディナーがあり、デザートを終えたら、機構本オークションのプロである会員さんが壇上に立って、ライブ・オークションがありました。食事は、丸テーブルに6席くらいずつ作ってあり、好きな所に座ります。同じテーブルに座った人たちで話をします。一人が話し始め、ひとくさり話すと、質問が少しあり、そして次の人が前の話を受けて話し始めて、私にとってはデカメロンの世界です。19世紀の小説で、かぎかっこの中が長い、数ページ続く、と思ったことはありませんか? それくらいの長さは一人の人が話し、皆はうなずきながら聞くというコミュニケーションです。知らない人ばかりに囲まれて全部英語でどうしよう、と思いましたが、皆がopenでkindなので大丈夫でした。私は初参加でありながらも、ほとんど皆が私のことを知っていました。会いたかったよ、とか、やっと来たね、本を通販で買ったのは私だよ、などと言われて、英語は平均6割理解でしたが、さっそく第二の故郷のようでした。今年の参加者は96人、うち初参加者は15人。その皆が一堂に会して16テーブルでそれぞれおしゃべりするので、サロンは大変な熱気がありました。
翌土曜は、再び別の人たちと一つのテーブルになって朝食を取り、バスツアーでモンティチェロへ。会員さん数人がミニバスを運転してくれました。午後はホテルに戻ってメンバーミーティング。コンテスト発表と賞状授与、残念ながら私は受賞を逃しました。その後は、会の運営をどうするかという事が、プレジデントと呼ばれている会長が議長となり、皆が次々に手を挙げて民主的に話されました。私も、せっかく参加したので、人の助けを借りてちょこっと意見を言いました。
休憩の後、製本家二人による、道具やスライドを見せながらのセッションがありました。これは、豆本の作り方や作品紹介の講義のようなものでした。 そして、ホテルの斜め向かいVirginia Center For The Bookに歩いていき、ワインとチーズ、ぶどうでもてなされて、学校紹介を聞きました。印刷機と活字、新しいプリンタなどが並べられ、中身から本を作っています。ここでも、最初に案内役が話した後は、皆が立ったままわーっとそれぞれに話していました。だんだん、知らない人がいなくなってきて、どの人も一度は話したことがある人になってきました。話し疲れた人から、学校が作った冊子を好きなだけもらい、好きなタイミングで帰っていきました。
豆本
最終日日曜日は、朝からホテルのサロンで設営をして、ブックフェアでした。そのために日本から持って行った私のスーツケースの半分は本でした。全部売れたとしても、そこにまた違う本が入ることはわかっていました。それまでの二日間でいろんな人と話したのが良かったようです。午前中は会員だけの販売で、午後から一般入場もあって販売しました。コンペに応募していた豆本、既刊で形がおもしろい豆本、カタログレゾネ、豆本の作り方の日本語の本などが次々に売れてほぼ完売して終了しました。25ブースが出店し、半分くらいは豆本古書店でした。もちろん売り上げは次々に他の豆本へと消えました。
豆本
そして、最後のディナーです。デザートのチョコレートケーキが出る頃に、The Rare Book Schoolの博士が来て、スライドを見せながら、研究発表を行いました。19世紀頃、シャーロットという名前の女性が、米粒に文字を書く級のものすごく小さな字をぎっしり書ける人で、小さな出版をして人気を博していたという、手書き本の貴重書の研究からわかったことの講演でした。
その後、プレジデントが再びマイクを握り、さまざまな賞の発表がありました。Carolineには花束が渡され、豆本で作った冠がかぶせられました。会に貢献した人への大きな銀色のカップが授与され、今年は会計さんが受賞しました。続いて今回大会に貢献した人への小さな7つのカップは、今回のワークショップ講師、二人のセッション講師、世話役夫婦、研究発表した博士、そして一つは私へ授与されました。初参加でカップをもらうなんて、信じられない!
そして、皆で写真を撮り、ハグをして別れました。夢のような三日間でした。
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