2012年12月21日

無酸

冬至らしい雰囲気になってきましたね。言壺通販では、毎年末恒例の、アンケート御礼のプレゼント抽選を行いました。今年は、ペイパルにショッピングカートを移したこともあってか、あまり件数は多くなく、当たる確率大での抽選となりました。言壺プレゼントは、K様が当選され、ささやかながら非売品の三角折本を進呈いたします。ペイパルは、私は海外とのやりとりだとすぐにこれを指定されるのでメジャー感がありましたが、日本ではなじみはないみたいですね。でも安定しているし来年もペイパルを使いますのでよろしく。

ところで、前回、中性紙というものに業界共通の基準はないと書きました。
実は和紙もそうです。「和紙」として売られていても、パルプ100%で、楮がひとかけらも入っていないというのはありえます。100均の半紙とか…。有名ブランドでも…。
ちょこっと酸化の話。 以前、私は「PHストリップ」という試験紙を使って、作品に使いたい紙のPHを測りまくりました。ちょっと予想外の結果が出ました。ものすごーく酸化した紙はとりあえず身の回りにはそんなにはなくって、ボール紙もファンシーペーパーも和紙も、ものすごく隔たった値にはならずに、かなり近い数値になりました。
その時はそれを不思議に思ったのですが、よく考えると納得のいく結果でした。PHストリップで測れるのは、「現時点での紙の表面PH」です。紙の表面っていうのは、楮100%の紙も、再生ボール紙も、そこそこ酸化していて、似たような数値です。しかも「現時点での」ということ。楮紙は、植物を溶かして抄き固めた物で、百年千年おそらくずっとほぼ性質を保ち続ける。一方だいたいの洋紙は、製紙の段階で薬品が使われ、将来的に酸化するシステムをその内部に含んでいる。紙の酸化は内部からむしろ起こります。だから、空気に触れさせずに大事に取っておいたって、内側から崩壊します。
作品を作る時、酸性紙を入れないようにしようとすると、そのへんのボール紙は全部アウトで、無酸なのはめちゃくちゃ堅いボードになり、豆本サイズに手切りは泣きます。そこまでするのなら接着剤が含む酸も気になりますよね。販売されている無酸の接着剤は、新製品で実証実験が足りていないのでちょっと敬遠。正麩糊を粉から煮て作り、木工ボンドにはアルカリ性の炭酸カルシウムを混ぜて酸を追い出しました。でもそうすると、使う水に含まれているイオンも気になりますよね。精製水で糊を煮て、筆も洗って、ということになります。
ところがここまでこだわってしまうと、美術品の修復級です。表装のお仕事は今や美術品の修復が多く、NASA水を使っているという話も聞きました。それと同じようなことになってしまいます。
でもちょっと待って。私は、どんなスピードで、どんなグレードの仕事をしていきたいか。
それを考えると、使う紙や素材が限られているところでは、自分の表現したい物が作れない、と思いました。無酸を貫くのなら、和紙に活版印刷してアーカイバルボードを表紙にした洋本か、和紙に墨で書いて和綴じにした和本か、二種類しか形が作れないかも。パッセカルトンをせっかく習っているけれど、膠も革も持たない物質ですしねー。
作品の中に、洋紙やボール紙を入れたい。そうすると、木工ボンドに炭酸カルシウムを混ぜるのはそんなに意味がないし、精製水までも使う意味がない。
そういう考えで作るものは、十年百年うまくすればもつけれど、千年は無理かなー。という物になります。
けれど作品の内容が、千年後の人間に意味がわかる物かもわからない。
それより、今すぐから十年百年楽しめるのが大事でしょう。そこに向けて作る。という結論に私は達しています。「今すぐから十年百年楽しめる」というのも、材料から作り方までちゃんと気を配らないとできない、けっこう大きな目標ですから。

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