2016年11月24日

Making of Ame ni mo Makezu Special Edition 『雨ニモ負ケズ』特装版

作りながら、まにあうんだよね? いいものになるよね? これで? と心配になる瞬間がありました。これまで学んできた技術の引き出しを探りつつ、ひらめきと工夫とを加えて、その不安をなくす方法を探りました。それは、伝統を踏まえたうえで、創意工夫によって新しいものを作るということをしたことになりました。誰も見たことがなかった、でも見た瞬間に、これが見たかったんだよ! と思われるような本を作りたい。それが、既に何億冊も本が存在しているこの世界で、私が新しく一冊の本を作る意味になってます。ひらめきと手仕事を重ねていくうちに、おのずと、自分にしか絶対に作れないという本になっていきます。でも私だけの力じゃない。今回の本『雨ニモ負ケズ』特装版は、活版と和紙に関わる、日本の職人さんたちの良質な仕事に支えられています。私は和紙と活版が好き! それと箔が好き! 革も好きだけれど賢治さんには似合わないから今回は使わなかった。
豆本雨ニモマケズ
豆本雨ニモマケズ
特装版で活版印刷した本文紙は、厚手の手すき和紙です。麻を使って本かがり綴じをして、本の背には、開きを助けるようにコの字クータを入れました。表紙はやすりかけをしてやさしい丸みを持たせました。本になった時、これらは見えない部分になりますが、実はこれだけの下準備をしてあります。
豆本雨ニモマケズ
本ができると、本の出来上がり寸法を計測して、函の制作に取り掛かりました。函のパーツも全て定規とカッターで手切りしました。函を組み立て、マグネットを埋め込みました。縁はやすりかけをして、なめらかにしました。それから和紙に水をつけて分ける「くいさき」でテープを作って、函の合わせ目を補強するために貼っています。そのあとさらに軽くやすりかけで仕上げました。これも、函になった時には見えない部分です。紙を貼り合わせる時、「水の力」を感じました。水で接着剤を溶くことで、均一に厚みも出ず接着します。和紙そのものがとにかくすばらしい素材で、薄くて丈夫なのでシビアに小ささを追及できます。
豆本雨ニモマケズ
函の外側の色染め。頭ではこうすると思っていても、出来上がりがかなり成り行きに左右される、この工程が終わってほっとしました。こういう作業をやるのは朝一に限ります。
豆本雨ニモマケズ
ふたの裏や、函の内側の底になる部分には、かきおろしの絵をつけました。飛び立つ水鳥と、ベルフラワーのメメントモリです。和紙は、竹やすすき、こうぞ、みょうがなどの、日本の自然の風物の優しいほのかな色合いです。下地も透けていてグレイがかった緑みが感じられます。
豆本雨ニモマケズ
一番下の段には、活字が入ります。今回、「活字で印刷したことをアピールしたい」との活版印刷の方の希望で、それなら、と特装版に組版の一部をつけることを考えました。冒頭部分「雨ニモ負ケズ風ニモ負ケズ」と、ラストの部分「サウイフモノニワタシハナリタイ」を、使用済みの活字で組んでもらいました。
豆本雨ニモマケズ
染めた紙の上から、銀の雨をイメージした箔押しした紙を貼って仕上げました。この細い線描とレイヤリングが私としては最大の技術革新的な創意工夫です。二冊の本と、組版が、一段ずつに入る、三段重です。函全体がきれいなシルエットになるように、だんだん深くなっていく三段の寸法の比率はフィボナッチ級数です。完成品は個展でごらんください。
豆本雨ニモマケズ
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