2016年10月27日

小さなアートブック『孤独』の1ページ

豆本
体調を整えるために朝夕、散歩しています。蝶が秋の花の周りをよく飛んでいます。頭をよぎるのが、「ひらひら蝶はうたへない」という種田山頭火の俳句です。五七五ではなくても、俳句になっています。この句を口ずさむたび、孤独を感じます。飛べても、歌えない、と。『孤独 Loneliness』では、真ん中付近にこの句を配置しました。この豆本では、私は編集の立場で、山頭火の句を選び、並べました。そして挿絵を描き、ドライポイントの版にして刷り、活字を組んで刷っています。ブックデザインと製本、製函、伝統手法による初の金箔押しをしました。絵は、倒木と二匹の蝶です。ドライポイントで刷ると、もやもや~んとした「バア」によるにじみが生まれました。駒井哲郎さんが『銅版画のマチエール』で、それが大事なマチエール(物質的な現れ方)なのだと言っている、版の表面を尖った金属の道具で引っかいてできるバア(これもフランス語で、ささくれ)。雁皮紙に載ったバアの効果は、刷った本人にも意外な現れ方で楽しく、見ているととても奥深い、インクによるもやです。新しいけれど古いような本をイメージして作りました。見返しに使っている紙は、山頭火がいた時代に重なっていそうな紙です。マグネットを埋め込んで、かちっと止まる表紙と函、その反面、ふわっと柔らかい函の側面が、ぞわぞわ、と何かの記憶を誘う、ちょっとお菓子の函のような郷愁のある、かっこいい黒革と強い金線の函です。
豆本
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