Nov 03, 2025
『航海記』海の窓装の魅力
航海記 KOUKAIKI「海の窓装」豆本『航海記』海の窓装の見どころを、著者であり製本家の赤井都の視点から紹介します。
1- まずは、審査発表の場でも、印刷の素晴らしさや、イラストの美しさへのコメントが多く寄せられたという話。
活版印刷の風合いが活きる紙、この物語に合う白い紙を選んだ、というところから始まり、その紙をさらに、手漉きの縁を落とさずに両面印刷して、両面がちゃんと合ったというミラクル。三木さんに文字を活版印刷してもらっている作業風景を、以前に投稿しているので、良かったら合わせてご覧ください。
この写真はチームワークがわかりやすいです。波の絵をたくさん描いたのは私。どの波の絵をどこに、どう配置するか、考えて、デジタルで波の形に抜いて配置したのは新谷さん。
右側ページの文字部分を印刷したのは三木さん。左側ページの波の絵を印刷したのは私。縁に1ミリくらい見えている表紙の紙の青色は吉成さんのアートワーク。
印刷が紙の、しっかりとしてまた優しい、厚みのある繊維の集まりのテクスチャの上に乗り、それが、文字であり、絵であり、意味を持ち、内容のある本である。物語である。
イラストは、ペンでスケッチブックにドローイングし、スキャンし、凸版にし、私の活版印刷機で印刷しています。
私は、グラデーションカラーで印刷するのが得意なので、一つの版に色を筋状に載せて印刷します。
三木さんが文字を印刷した後の紙の上に、私が挿画を一つずつ刷っていきました。
色味については、新谷さんにイメージを出してもらいましたが、アナログでそのとおりに色が出るとも限らないので、その場に任してもらいました。
波間に浮かぶ月は物語の中で重要なので、色を何度も調整してから刷りました。
暗いだけでもない、明るいだけでもない、しかも黄色は白い紙の上で見えづらい色。
インキは乾くとまた色が違って見えてきます。
うまく印刷できて良かったです。
日本語の本ですが、書店版サイズで、英語翻訳を読むことができます。
『航海記 Notes from a Voyage』(ISBN 978-4-911550-00-7)
訳者 スワスティカ・ハルシュ・ジャジュ
2- 豆本『航海記』海の窓装の魅力 函
本を入れる函も、もちろん手で作っています。
出来上がった本の寸法を計測し、ぴったり入る函をデザイン設計し、素材をカットし、組み立て、活版印刷の外題を貼り、仕上げのトップコートを塗るところまで。
函の紙は、表紙の紙と合わせて吉成さんの制作です。
私は、その紙をどういう向きにどの箇所へ貼るかを考え、出来上がったものは、海にあるような綱などの三角のラインと面が、緊張と柔らかさを感じさせる函でした。
面を転がして見ていくと、また味わいが深いです。筆のかすれなどは函一つずつ異なります。
マットな和紙の手触りがあります。
函としては、本を上からすっと手に取りたいので、四方帙にしました。四方帙はボール紙の部材をたくさんカットせねばならず、あまりにも大変なので、私は2007年の『雲捕獲記録』以来作っていませんでした。
今回は、被せ蓋ではなく、ミニチュアサイズで手に入るネオジムマグネットを、ボール紙の中に埋め込みました。
外からはマグネットの存在はわかりませんが、すっと開き、すっと閉まるのは、マグネットならではの動きです。
本の函を目にした時から、想像力が動きだすように。世界観が、外側にも発せられているように。
本というメディアは、動画のように勝手に動いてはいかないので、手にされて、開かれるという、見る人の働きかけが必ず必要です。人の働きかけがなければ、本は見られることもないのです。
3- 豆本『航海記』海の窓装の魅力 「海の窓」
物語の中に、「この本と一緒に宝物を埋めておきます」というくだりがあります。
宝物は、貝殻だろうか、何だろうか、と私は物語を書きながらもわからなかったのですが、今回、この本を作りながら、宝物は、月の光を写し取ったような絵であっても良いのではないかと考えました。
裏表紙に仕込んだのがそれで、表紙ボールの厚みをコントロールして、外見からは普通の上製本に見えます。
物語を最後まで読んでから、開けてほしいなと思います。
薄い雁皮紙に月を印刷し、窓枠に貼り込んであります。
突き破りそうに薄い、繊細な紙です。
豆本は子供向けと決め込んでいる人もいますが、このように、大人向けの内容や扱いで、大人が扱い、鑑賞することを前提に作られています。
また、本というイメージを自分の中で固めてしまう必要もなく、アートである本の存在もあり、さまざまな人生の状況の中で、このような本が人を勇気づけることもあります。
写真:市川勝弘
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